こいつに求めるのは「哀愁」。

「OG-24」Duck JKT

無地のブランケットでなければ。

「OG-14」にブランケットの裏地を付ける。企画自体は2022年に立ち上げていたが、当時、既にブランケットをはじめとする様々な生地の入手が困難な状況になっていた。

かつては定番とされる生地は豊富に在庫があり、使いたい時にすぐ入手することができた。だが、原材料高騰などの影響でメーカーは最低限しか生地を作らず、ここ数年は慢性的な品薄状態。人気が高い生地は、大手企業が買い占めてしまうことも少なくない。

そのことは2023年4月に再販した「OG-7」のレポートでお伝えした通りだが、「OG-24」のリリースまで時間が掛かった理由はそれだけではない。

どうしても、無地のブランケットを使いたかった。

既にリリースしているブランケットの裏地付きJKT「OG-7」「OG-16」には、いずれもお馴染みのラインが入ったブランケットを採用している。それはベストなチョイスだと信じているが、今回の「OG-24」にはライン入りではなく、無地のブランケットを使いたかった。

哀愁漂うモスグリーンのジャケットに、カジュアル的要素は一切不要なのだ。

ラインのバリエーションを豊富に揃える「いつものブランケット」(写真上)には、実は無地も存在する。写真は無いが、ブランケットのラインが入らない仕様、つまりグレーの部分だけと考えて頂きたい。

だが、それでもオガワが脳内に描く「OG-24」の理想形にはリンクしない。枯れたエイジングを見せるモスグリーンのダック生地に、無地グレーのブランケットの組み合わせ。せっかくの「哀愁」が損なわれてしまうのではないか。もっとダークな色がいい。

グレー単色のブランケットを黒く染めることも考えたが、特徴的でカラフルなネップ(繊維が絡み合った節)がどのような色味に染まるのか、不安定な要素も多い。

妥協するか、理想を追い求めるか。

念の為、生地の調達をお願いしている美鈴テキスタイルの鈴木代表に在庫を確認してもらったところ、案の定、無地グレーのブランケットですら在庫はほぼ無い。ただ、数か月先の仕上がり分を確保することはできるとのこと。

適当な理由を付けて、妥協を正当化しようとするリトルオガワが心の隙間から顔を覗かせる。「確保をお願いします」そう言ってしまえば、事は早く進む。品番は違えど昨年には、無地グレーのブランケットを装着したジャケットをリリースできただろう。

だが、ダメだ。

何のために「Original Garment Brothers」を立ち上げたのか。自分が本当に「欲しいモノ」「着たいモノ」「使いたいモノ」だけを作るために、職人たちを巻き込んで立ち上げたはずだ。

売上、利益、効率。すべて重要。「そんなことは関係ない」などと綺麗事を言うつもりは毛頭ない。だが、それ以上に大切なことがある。それは「今この瞬間の理想形」を追い続けること。そして、不特定多数ではなく特定少数のブラザーと楽しむモノ作りを貫くことだ。

結局、無地グレーのブランケットを使うことは諦め、企画はしばし中断となった。

それは突然やってきた。

今年の4月初旬、生産ファクトリーである岡山児島のアパレルナンバ、難波社長からLINEが入る。「新たなブランケットのスワッチ(素材見本)を送ったので確認してほしい」とのこと。そして翌日、届いたスワッチが上の画像だ。

これだよ、これ。

5色展開だが、瞬間的&直感的に「No.1」に決めた。モスグリーンのダック生地が放つ「哀愁」を損なわない……むしろ際立たせる、渋味のある色合い。ネップの入り具合も抜群だ。

緑味と茶色味を帯びた黒系色。偶然にもモスグリーンの日本語でもある「苔色」をもう少し黒くした感じだ。

いわゆるメーカーが定めるブラックは「No.5」なのだろう。選んだ「No.1」の正式な色名はわからないが、オガワの独断で「掠れたブラック」と呼ぶことにした。

ツイード生地のようなアダルトな表情も素晴らしい。

参考までに……、ツイードとは「紡毛糸」などを平織り、綾織りでざっくりと織り上げた生地。「紡毛糸」とは太く短い羊毛を紡いだ糸のことで、高密度で織り上げることでざっくりとした質感の生地に仕上がる。新品時は硬いが、着込むことで次第に柔らかく馴染んでいく。ハリスツイードなどが有名。

一方、今回選んだ生地は、肉厚ながら新品時から非常に柔軟。ウール70%で、今まで採用してきたブランケット(ウール50%)よりも割合が高く、より高い保温性が期待できる。

若干起毛しているが、今までのブランケットほどの起毛ではないので、肌が敏感でチクチクが気になるブラザーでも快適に袖を通して頂けるはずだ。

ついでに「ブランケットとは」と検索して調べてみると「もともとは毛布と同じ意味」「起毛した保温性の高い生地」「羽織物や敷物に使える布」などなど。素材もウールや綿などの天然素材だけでなく、合成繊維など様々。明確な定義があるわけではなく、意外とザックリとしていた。

迷うことなく、生地を確保。

新たなブランケットも例に漏れず品薄で、すぐには「OG-24」の生産に必要な量は確保できない。美鈴テキスタイルの鈴木代表に今後の生産状況を確認してもらったところ、8月頃に織り上がるという。

今回は一片の迷いもなく、即答で次回仕上がり分を確保してもらうことにした。無論、個人事業主であるオガワ、強気ではなく若干弱気の生地確保。生産数は限られるが「もっと生地を確保しておけば……」と思うくらい、腹八分目、いや腹五分目ほどがオガワのモノ作りには合っているのだ。