気骨を試す、多脂革のプロダクト。

「OG-13」Leather Bag(End)

「あの茶褐色」を我が物にする。

例えば、傷だらけのヴィンテージ・ヴィトンの革。例えば、紫外線に晒され続けたエルメスの鞍。革の魅力に憑かれた男たちは、飴色を通り越した「茶褐色」に並々ならぬ憧れを抱く。

あの色、あの表情を我が物にしたい。

オージーブロスが展開するプロダクトの中で、特に人気が高い馬革バッグ「OG-6」。アメカジブランドであるフラットヘッドの革部門「ストックバーグ」の職人が仕立てる、幅30センチに満たない小さなバッグだ。

A4サイズの書類は折らないと入らない。雑誌もほとんど入らない。500mlのペットボトルは横にしないと入らない。

この強烈なクセを持つ「OG-6」のサイズ&基本デザインはそのままに、触ることさえ躊躇するナチュラルの多脂革で新たなバッグを仕立てることにした。

日本が世界に誇る老舗タンナー、栃木レザーで鞣される多脂革は、その名の通り油脂をたっぷりと含み、紫外線を浴びることで透き通るような飴色、やがて茶褐色へと姿を変える。「憧れの茶褐色」を目指すには、申し分のない素材だ。

「ガンガン」を検証する。

リスクも伴う。染色していない素上げの多脂革は、非常にデリケートなマテリアルだ。ポケットに収納することが多いウォレットとは異なり、バッグはむき出しで持ち歩き、風雨に晒される。傷や汚れが付きやすく、雨に濡れればシミになる。

気にせず、ガンガン使い込めばいい。

言葉にするのは簡単だ。アメカジ専門誌「Daytona BROS」の編集長時代、この「ガンガン」という言葉を誌面で何度使っただろうか。2018年に独立して「Original Garment Brothers」を立ち上げてからも、当たり前のように使ってきた。

ふと不安になった。日頃からブラザーに「ガンガン使ってほしい」と伝えているオガワ自身、本当に容赦無く、ガンガン使い込めるのだろうか。もし、傷や汚れを気にして恐る恐る使うのであれば、ブラザーに届ける言葉にに説得力は無い。

いい機会だ。試そうじゃないか。

この多脂革バッグ「OG-13」をオガワ自身が使い込む。傷や汚れやシミ、すべてを許容することができれば、品番を与え、製品化しよう。受け入れることができなければ販売はしない。

そう心に決めて使い始めたのは、2021年4月のことだった。

リスクの先の自己陶酔。

あれから9か月。もはや、傷も汚れもシミも気にならない。思い返せば、己との勝負は最初の1か月だった。

特に最初の一週間は臆病だった。俗に言えば、チキン。外出先では置き場所に気を使い、雨が降れば濡れないように抱えて持ち運ぶ。コンクリートの壁や電柱に擦れようものなら、すぐに傷を確認したい気持ちを我慢し、人目のつかない所でダメージを確認する。

だが、1か月もすれば気持ちが吹っ切れる。いちいち気にする行為が面倒になる。意図的に雨に打たれて、シミを確認する余裕すら生まれる。もうどうにでもなれ。そう思えたら、しめたもの。あとは表情が荒々しく変化するほど、己の骨太さに酔いしれるのみ。

多脂革バッグ「OG-13」。
楽しいじゃないか。