Making of OG-13

「OG-13」Leather Bag(End)

シンプルだから、難しい。

多脂革バッグ「OG-13」と馬革バッグ「OG-6」。デザイン上の違いはダイヤキルトの有無。内部にウレタンなどを挟み込み、立体的に縫い進めていくダイヤキルトが無い分、「OG-13」の製作は簡素になると思っていた自分が恥ずかしい。

サンプル製作に立ち会って初めて、「OG-13」がいかに手間の掛かるプロダクトであるかを知った。

素材は傷や汚れが付きやすい、ナチュラルの多脂革だ。不用意に触っただけで、手の脂や汚れが付着する。黒い馬革の「OG-6」と比較すると、取り扱いに一層の注意が必要で、製作にも時間が掛かる。

さらに、「OG-6」の馬革に比べて「OG-13」の多脂革はコシが強く、硬い。バッグに仕上がった時のカッチリ感は抜群だが、反面、仕立てには力も必要となる。

熟練職人でも、一日数個のみ。

2021年に発刊した「The Magazine 001」にも掲載したが、あらためて「OG-13」の製作工程をダイジェストで紹介する。全工程の一部に過ぎないが、ストックバーグの職人による丁寧で正確な手仕事をご覧頂きたい。

写真は「OG-13」を構成する各パーツ。事前にハンドルやジッパーは装着しておいてもらった。

本体部分の多脂革に裏地を貼り合わせる。剛性を出すために挟み込んだ芯材は企業秘密。試作を繰り返して、ようやく辿り着いた芯材。

多脂革と裏地を縫い合わせていく。素上げの多脂革は汚れが付きやすいので、縫製には細心の注意を払う。

余った裏地をカッターナイフでカットしていく。美しい仕上がりのためには、見えない部分にも丁寧な作業が求められる。

ジッパーと裏地を装着してリング状になったマチ部分を、先ほど裏地を縫い合わせた本体部分とドッキングする。

位置をしっかりと決めたら、まずはホッチキスで仮留めする。もちろん、縫製後にホッチキスの針は外す。

リング状のマチ部分に本体部分のパネルを仮留めし、箱状に組み立てていく。写真は組み立て途中の状態。

箱状、つまりバッグのカタチに組み立てた状態。まだ仮留めだが、歪みがないか細かくチェックする。

縫い合わせる箇所をハンマーで叩き、厚みを整える。強く叩き過ぎると革を痛めてしまうので、絶妙な力加減で叩く。

裏返しだが、仮組みが完了してバッグの形になった。出張時にポマードを入れる、こんな雰囲気の小物ポーチが欲しい。

専用のミシンで縫い合わせる。小さいバッグとはいえ、手で抱えながら真っ直ぐ縫い進めていくには高度な技術が求められる。

ぐるりと一周を縫い終わったら、仮留めしていたホッチキスの針を丁寧に外していく。多脂革や裏地を痛めないように慎重に行う。

縫い合わせた部分を再びハンマーで軽く叩き、馴染ませていく。多脂革は硬いので、都度、形を整えながら作業を進める。

縫い合わせた部分にパイピングを施す。真鍮製の「ラッパ」と呼ばれるパーツを使い、テープ状のパイピング生地を巻き付けながら縫っていく。

バッグ内部の縫製箇所は、すべてパイピング仕上げとなる。肉厚な生地によるパイピングは耐久性を高め、高級感を与えてくれる。

完成目前の最難関、もっとも職人泣かせな工程。バッグを表に返すのだが、多脂革はとにかく硬い。この作業によって、多脂革の表面には多少を問わずシワが入る。ダイヤキルトを施した馬革バッグ「OG-6」では目立たないが、素上げの多脂革なのでシワが目立つこともある。その点をご理解頂きたい。

バッグ表側から縫い合わせ部分を叩いて、カタチを整える。ハンマーの跡や汚れが付かないように細心の注意を払う。

使用するジッパーは、馬革バッグ「OG-6」と同型。テープカラーも同じだ。引き手も多脂革で丁寧に作り込まれている。

仕上がった多脂革バッグ「OG-13」を、ストックバーグを統括する宮坂氏が入念にチェックする。氏の協力なくして、「OG-6」も「OG-13」も誕生しなかった。心より感謝。