何度でもサンプルを作る。

「OG-13」Leather Bag(End)

最高の多脂革を仕込む。

簡単に言ってしまえば、「OG-13」は馬革バッグ「OG-6」の多脂革バージョン。30センチに満たない小さなバッグの使い勝手の良さは、このオガワが誰よりも知っている。今さら検証する必要もない。サンプルを一個作れば、事足りるだろう。

だが、その油断は己の甘えでもある。多脂革だからこその問題点もあるはずだ。

ファーストサンプルの使用期間中、少しでも気になったことを書き留めた。そして、次なるサンプルに反映させる。結果、最終的に3個のサンプルを作ることになった。

使用する多脂革の部位、縫製に関する要望、仕上げ処理について。ファクトリーと何度も打ち合わせを重ね、リクエストという名の「オガワのワガママ」に応えてもらった。

一方で、ストックバーグを統括する宮坂氏も独自に動いてくれた。「OG-13」に適した多脂革を入手するため、栃木レザーの販売代理店である株式会社和宏の山﨑社長に相談。より強靭で美しい、大判の多脂革を仕込んでもらえることになった。

パーツの裁断は宮坂氏が革の状態を見極め、一枚一枚、時間を掛けて丁寧に抜き型を置いていく。その姿からは、究極のプロダクトを目指す、愚直なまでの職人魂を感じずにはいられない。なんと頼もしいことか。

「理想」のための「省略」。

2021年に発刊した「The Magazine 001」に掲載した製作レポートでは、完成後に二種類の保護剤を塗布したことを紹介した。フラットヘッドが独自の配合でブレンドした秘伝の保護剤は、紫外線の影響を受けにくくし、汚れや水濡れから革を保護する効果がある。

これが、思わぬ事態を引き起こした。

使用前に日光浴をさせようと、ニートフットオイルを塗布したところ、上写真のように浸透具合にムラが生じてしまったのだ。

理由は明白。保護剤が多めに塗られた部分はオイルを弾き、保護剤が少なかった部分にはオイルがたっぷり染み込んだのだ。

フラットヘッドでは、主にウォレットなど小さなプロダクトに保護剤を塗布している。塗布面積が小さい場合、保護剤を均一に塗布できるのでまったく問題がない。染色された革も問題ない

ミニバッグとはいえ「OG-13」はウォレットよりも遥かに大きい。そのため、保護剤の塗布量にムラが生じ、結果、オイルを塗り込んだ際にもムラが生じたのだ。この状態で紫外線に晒せば、日焼けもムラになる。だが、均一に塗ろうと保護剤の量を増やせば、多脂革本来の風合いを損ねかねない。

そもそも「The Magazine 001」にも書いた通り、オガワとしては紫外線の影響をバリバリ受けて欲しいと思っている。理想の茶褐色を目指すのだ。

そこで、保護剤を塗布しない新たなサンプルを作った。次のレポートで紹介しているが、ニートフットオイルは均一に浸透し、日焼け具合もすこぶる良い。よし、これでいこう。

「OG-13」は保護剤を塗布しない状態でブラザーにお届けすることに決めた。