無限の箱愛。
突然だが、箱が好きだ。子供の頃の「おもちゃ箱」。オガワにもあったであろう思春期の「宝箱」。直線で構成された無機質な箱には、いつだってワクワクが詰まっていた。
50歳に近づいた今も、その気持ちは変わらない。
お気に入りの腕時計を入れる収納ケース。出張に連れて行くリモワのスーツケース。以前の相棒アストロや現在の相棒ラムも、捉え方によっては「箱」。
増え続ける型紙やサンプル、大切な私物を保管している収納ルームも、いずれは同デザインのコンテナで埋め尽くしたいと思っている。
やはり「箱」というものに対して、並々ならぬ執着がある。
2020年に発表した「OG-9」は、まさにオガワの箱愛を爆発させた。特に「箱」を意識して企画したプロダクトではない。コロナ禍の緊急事態宣言発令中の深夜ウォーキング時に、小さなウォレットが欲しくなったことに端を発する。
その辺の経緯は「OG-9」のレポートをご覧頂きたい。
ラウンドジッパーのショート。程良い厚みと重量感。もちろん箱ではないが、箱に通ずるカッチリ感。適度にお札や小銭やカードを収納した時の、張りのある握り心地は病みつきになる。
このカッチリ感をロングでも味わいたい。次なる欲求が溢れ出すのは、至極当然の流れだった。
最初の緊急事態宣言が発令された2020年よりも自由に行動できるようになり、いつでも打ち合わせや出張に出向けるようになった。
そろそろ作ろう。
二つ折りロングウォレット「OG-3」(ミシン縫い)と「OG-8」(手縫い)。そして、ラウンドジッパーのショートウォレット「OG-9」。
それらに続く4作目のウォレットにして、「二つ折りロング」「ラウンドジッパーショート」と肩を並べる、3rdモデル。
ラウンドジッパーロング。
ウォレットには様々なスタイルがある。ミドルウォレット、トラッカーウォレット、二つ折りショート……。それぞれに魅力があることは言うまでもないが、今この瞬間のオガワの趣味嗜好と照らし合わせると、先の3スタイルが合致する。
そう「ウォレット三部作」を完結させるのだ。
同じ方向を向いた、モノ作り。
新たなウォレットの製作は「8」「9」に続き、亀太郎氏が手掛ける。「O.G.BROS.WEB」で幾度となく紹介してきたので詳細は割愛させて頂くが、オガワが絶大な信頼を寄せる革職人である。
レザークラフトを生業とし、プロとして生きる以上、利益や効率は決して無視できない要素。だが、亀太郎氏は何よりも「プロダクトの完成度」を最優先に考え、オガワのリクエストに100パーセント以上の品質で応えようと、日々、挑戦と検証に没頭してくれる男だ。これほど頼りになる存在はない。
2018年に出版社を退社し、「Original Garment Brothers」を立ち上げて5年。数多くの人々と出会ってきた。有難いことに、最近ではお声掛けやご提案を頂く機会も増えた。
利益や効率を最優先に考える人、プロダクトの完成度を最優先に考える人。オガワはどちらもプロとして正しい考え方だと思っており、すべての方々との出会いが貴重な経験であり、感謝に尽きない。
だが、理想のプロダクトを生み出すパートナーには、間違いなく後者を選びたい。オガワ自身がワクワクすること。プロダクトを手にしてくれたブラザーがワクワクすること。それが結果的に作り手側の利益に繋がると信じて止まない。
今、オガワが各プロダクトでタッグを組ませて頂いているプロフェッショナルたちは、皆、同じ感覚の持ち主だと思っている。むしろ、同じ方向を向いていなければタッグは長続きはしない。