人知れず進化するプロダクト。

「OG-19」Crocodile Bag

自己満足を忘れてはいけない。

2024年6月、生産ファクトリーであるグルーバーレザーの工房を訪ね、「OG-19 Brown」のサンプル製作に取り掛かった。

昨年リリースしたブラックの「OG-19」と製作工程は同じ。だが、約1年間、ブラックの「19」を使用した経験に基づき、数箇所に微調整を施すことにした。

昨年製作したブラックの「19」と今回製作するブラウンの「19」、両モデルを比較して、その違いに気付くブラザーはいないだろう。それほどまでに微妙な調整。モノ作りに対するオガワの自己満足でもある。

基本的な製作工程はブラック「OG-19」のレポートで解説しているので、ここではごく一部の製作風景のみご紹介させて頂く。

製作工程でもっとも神経を使うのは、クロコダイルの腹部を贅沢に使用する胴パーツの位置決めだ。センターを合わせ、腑の並びが視覚的にもっとも心地良く感じる位置に型紙を置く。そして、銀ペンで裁断位置をマーキングする。

人間の視覚は、驚くほど正確で研ぎ澄まされている。1ミリ、2ミリ、ほんの僅かなズレに違和感を抱く。銀ペンでマーキングした裁断位置に、抜き型を置く工程。一見すると簡単に見えるが、職人はじっくりと時間を掛け、抜き型を静かに落とす。

僅かなズレも、クロコダイルのたわみも許されない。ひとたび、クリッカーと呼ばれる裁断機でパーツを抜いてしまえば、後戻りはできない。真剣勝負。

裁断が完了した胴パーツには分厚い芯材を貼り、バッグの強度、カッチリ感を向上させている。今回は使用する接着剤をより強力なものへと変更し、クロコダイルと芯材をガッチリと貼り合わせることにした。

昨年製作したブラックモデルにおいても、しっかりと貼り合わせているので何ら問題はない。オガワ自身、ブラックモデルを約1年使用しているが、剥がれなどの不具合はまったくない。

ただただ「10年後、20年後、接着が弱まって、内部で芯材の一部が剥がれたら……」という、心の中に潜む心配性なリトルオガワの囁きによって、より強力な接着剤を使用してもらったということだ。

各部の漉き厚も微調整している。約1年使用すると「ここをもう少し硬くしたい」「ここは少し柔らかくしたい」というポイントが見えてくる。そのポイントを、コンマミリ単位で漉き厚、漉き幅を調整することで、「今この瞬間の理想形」に追い込んでいく。

ブラウンのクロコダイルに合わせて、手縫い糸の色も新たに選んだ。縫製糸はロール状と実際のステッチでは同色でもイメージが異なる。そのため、候補の4色の糸で実際にクロコダイルを手縫いし、もっともマッチした色を選んだ。

「OG-19」は内装を除き、バッグ表面の縫製箇所はすべて手縫いで仕上げている。素材であるクロコダイルは、表面に凹凸があり、鱗状の硬い部分も混在する。バッグのように大きく、立体的で曲線も多いプロダクトを手縫いで仕上げるには、高度な職人技が求められることは言うまでもない。

似て非なる「19」。

遂に「OG-19 Brown」のサンプルが完成した。同じ品番を与えることを躊躇したほど、ブラックの「19」とはまったく異なる雰囲気。緊張感漂うブラックモデルよりも、ややカジュアル。レザーJKTやデニムとの相性も抜群だ。とは言え、オガワの率直な感想は……、ブラックもヤンチャだが、ブラウンもヤンチャ。

馬革バッグ「OG-6 Ver.Cha-Uma」のレポートでお伝えしたが、ブラウンの革にゴールドのジッパーや金具の組み合わせは、意外と「ワルい」。それは、クロコダイルという素材でも同じだったということだ。

自分で企画しておいて言うのも何だが、幅30センチに満たないクロコダイルバッグは持つ人を選ぶ。街中を歩けば視線も熱い。軟弱者は受け付けない、圧倒的な存在感を放つ。

だが「Original Garment Brothers」の各プロダクトをご愛用頂いているブラザーであれば、「OG-19」の迫力を上回る、確固たるスタイルを確立しているはず。他人の視線よりも自己満足。必ずや最高の相棒になってくれるだろう。

その一方で、この「OG-19」で初めて「Original Garment Brothers」の世界にハマってくれる、骨太なブラザーとの新たな出会いも楽しみにしている。