ドラマチックな馬革、現る。

Leather JKT 2021(End)

透き通るような、妖艶な赤茶。

6月、仕込んでいた馬革のサンプルが届いた。本来であれば大阪のファクトリーを訪ね、職人たちと共に確認するのだが、コロナ禍においては移動もままならない。やむなし。

紐を解き、ロール状に巻かれた馬革をゆっくりと転がす。期待と不安が入り混じる。極限のワクワクとドキドキ。この瞬間には中毒性がある。病み付きになる。

どんぴしゃり。

脳内に思い描いていた赤茶色の馬革が、目に前に現れた。赤みを多く含んだ、手染めならではのムラ感。前レポートで紹介した「G-1」の馬革ほど激しくはないが、それでも一般的なマシン染色に比べれば圧倒的にヤンチャだ。

馬革について詳しく解説しよう。

今まで「Original Garment Brothers」のレザーJKTには、ブラックに染め上げた素上げの馬革を使ってきた。ワイツーレザーの梁本社長が「ファンタジスタ」と称する孤高の職人が、国内の小さなタンナーで鞣す馬革。天然のキズも一切隠さず、馬革本来のダイナミックな表情を存分に楽しめるマテリアルだ。

今シーズンも引き続き、「OG-2」「OG-5」「OG-12」の馬革は、その頑固一徹な職人の手に委ねている。

一方、「OG-15」に使う赤茶色の馬革は、国内の別のタンナーで仕込むことにした。上質でキメが細かく、風合いに優れた馬革を得意とする。強靭でありながら柔軟。オヤジJKTにこそ相応しい馬革だ。ワイツーレザーが長年タッグを組んできた手染め職人もいる。

何よりも、目の前に広げられた馬革サンプルの仕上がりを一目すれば、このタンナーを指名しない理由が見つからない。

数年後の姿を、思い描く。

「Original Garment Brothers」のプロダクトは、5年後10年後、ブラザーが心から相棒と呼べる存在になっていなくてはいけない。そのためにも、着続けること、所有することにワクワクできる「ひと手間」を惜しまない。

フルベジタブルタンニンで鞣し上げた馬革を、一度キャメルに染色。その後、職人が赤茶色の染料を手作業で表面に塗り込む。染め上がった馬革を漉き屋に運び込み、1.3ミリ均一に割る(漉く)。

例えば左右の袖など、レザーJKTでは部位によって革の厚みが異なることは珍しくない。「天然素材の風合い」として片付けられてしまうことが多いが、モノに対して神経質なオガワは、厚みが均一に揃った一着でなければ満足できない。そこで、2019年から「割りのひと手間」を採用している。

2020年からは、さらに「もうひと手間」を加えている。1.3ミリ均一に揃えた馬革を再びタンナーに戻し、タイコで空打ちして揉み込む。揉む時間が長ければ、不自然で人工的なシワが浮く。短ければ、表情の変化が乏しい。馬革の状態を見て、職人が最適な時間を導き出す。

目指すのは、シワが浮きたくてウズウズしている瞬間の馬革だ。

これらの「ひと手間」については、2019年、2020年の各レポートで詳しく解説している。

Leather JKT 2019
Leather JKT 2020

こうして誕生する赤茶色の馬革は、着込むほどに無数の皺が浮き、擦れる部位は下地のキャメルが滲み出る。荒々しくも妖艶なエイジングこそ「OG-15」の醍醐味となるはずだ。

だが、この馬革の5年後10年後の姿を見た者はまだいない。オガワと共に見届けてくれる骨太なブラザーが現れることを楽しみにしている。