新たな赤馬JKT、誕生の裏側。

Leather JKT 2022

2022年は、赤馬3モデル。

昨年発表した赤馬は「OG-15」だけだったが、今シーズンは新たにシングライダース「OG-2」、カーコート「OG-12」も赤馬で仕立てることにした。

当初、赤馬の新規投入は「OG-12」だけを予定しており、昨年から継続する「OG-15」と合わせて、赤馬は2モデルの展開にしようと考えていた。

手染めの赤馬を目にした瞬間から、次なる赤馬は「OG-12」と決めていた。「良識ある大人の不良」を演出するカーコートと、ムラ感の強い赤馬のマッチング。その姿を脳内に思い描いただけで、鳥肌が立つ。

他方、赤馬の「OG-2」に至っては、袖を通す自分の姿をイメージできなかった。

だが、赤馬「OG-15」の発表以降、「赤馬でOG-2を作って欲しい」という多くのリクエストが届いた。かつてない多くのリクエストに正直驚かされた。

「Original Garment Brothers」のモノ作り。それは、自分自身がワクワクできるかどうか、そこに尽きる。どんなに多くのリクエストを頂いても、自分がワクワクできなければ製品化することは決してない。

自己中心的、ワガママ、上から目線……、そう思う人も多いだろうが、こればかりは譲れない一線。「Original Garment Brothers」の生命線だ。

そんなワガママを貫いたモノ作りに、極少数のブラザーが賛同してくれればいい。それが、特定少数のブラザーと楽しむ「Original Garment Brothers」の存在意義だ。

とは言うものの、これほどまで多く寄せられたリクエストを、オガワの脳内イメージだけで退けるのはいかがなものか。そこで、試しにサンプルを製作し、実際に現物を見てから判断しようと考えたのだった。

赤馬「OG-12」、赤馬「OG-2」の製品化については、「The Magazine 002」(完売)にじっくりと書き連ねた。既読のブラザーも多いと思うが、あらためて掲載させて頂く。

(以下、2022年7月発刊時の掲載記事を原文のまま掲載)

心優しき「不良オヤジ」のカーコート。

研ぎ澄まされた日本刀のような、大人のカーコート。若造には似合わないオヤジのための一張羅を目指して完成させた「OG-12」は、多くの骨太なブラザーにご愛用頂いている。オガワも着用する機会が多く、冬場はこいつを羽織り、マフラーを首からラフに掛けるスタイルで過ごすことが多い。

「OG-12」の魅力は、カジュアルはもちろん、かしこまった場面にも違和感なく溶け込む守備範囲の広さ。そして、ダンディズムとでも言うのだろうか、大人の身だしなみを演出してくれる端正な佇まいにある。その一方で、「良識ある大人の不良」「オヤジ世代の凄み」を体現する、迫力も兼ね備える。

そんな「OG-12」と赤馬をマッチングさせれば、さらにヤンチャで、唯一無二のカーコートが完成する。昨年「OG-15」のプロジェクトを進めている時から、赤馬で仕立てる次のジャケットは「OG-12」と決めていた。

勘違いしないで頂きたいのは、他を威圧することや、粗暴な振る舞いをすることを推奨しているわけではない。そんな子供じみたことは、若造がやっていればいい。

子供の頃、周りの大人たちの中には、2パターンの怖いオヤジがいた。まずはカミナリオヤジ系。悪さをすれば、人の子でも大声で怒鳴ってくれた。小学生の時、空き地で近所の友達と野球をして遊ぶことが多かった。打順待ちなどで暇を弄ぶと、隣接する一軒家の外壁を使って、いわゆる「壁あて」をして遊んでいた。外壁には何十、何百のボールの跡が付く。住人が出てくることはなかったが、それを見た近所のオヤジにこっぴどく怒られた記憶がある。だが、暑い日にはアイスを配ってくれたり、心優しきオヤジでもあった。

もうひとつのパターン。それは、圧倒的威圧感のあるオヤジ。寡黙で口数は少ない。もう遠い昔の話だが、高校時代、学校帰りに仲間たちと駅のホームで煙草を吸っていた時のことだった。周りの大人たちは何も言わず遠巻きに見ていたが、歩いてきたひとりのオヤジが足を止め、ジロっと自分たちの方に顔を向けた。年は50代だろうか。決してコワモテでもなく、筋骨隆々な体型でもない。身だしなみの整った、普通のサラリーマン風。だが、その時に感じた威圧感は、凄まじいものがあった。オガワたちは皆、下を向き、煙草を消した。オヤジは何も言わずにまた歩いて行った。不思議とその時の光景が忘れられず、「カッコいいオヤジ」としてオガワの脳内に刻まれている。

脱線し過ぎて、話の主旨を忘れ掛けているが、つまり赤馬の「OG-12」は、そんなカッコいいオヤジたちに着て頂きたいと思っている。

見ての通り、カーコートである「OG-12」は着丈が長い。前身頃にヨーク(切り返し)も無く、ポケット口もシンプル。ゆえに、他モデルと比較すると馬革の面積が圧倒的に広く感じる。同じ赤馬を使う「OG-15」と比較しても、ムラ感をダイナミックに感じることができるはずだ。

言い換えれば、手染めのムラ感が非常に目立つ。色ムラやパーツによる色の違いは当たり前。均一な色合い、落ち着いたレザーJKTを求めている人には絶対にお勧めできないジャケットでもある。

同じフルベジタブルタンニン鞣しでも、ブラックの「OG-12」とは異なるレシピ、そして手染めによる染色。見た目の荒々しさとは対照的な、抜群の柔らかさと馴染みの良さ。ぜひ袖を通して頂きたい。

ブラザーの声が作り上げた、赤馬フラッグシップ。

ブラザーに心より感謝したい。赤馬で「OG-2」を作る予定はまったくなかった。販売の有無に関わらず、サンプル製作すら予定していなかった。理由は簡単。赤馬で仕立てた「OG-2」に袖を通す自分をイメージできなかったからだ。イメージできないと言うことは、己の理想や欲求がそこには無いということ。

自分が本当に欲しいと思うものでなければ作らない。2018年にオージーブロスを立ち上げてから今日に至るまで、決してブレることのない絶対ポリシーだ。

が、しかし。昨年「OG-15」を発表して以降、「赤馬でOG-2を作って欲しい」という多くのリクエストがオガワの元に届いた。10や20と言う数ではない。かつてないリクエストの多さに、正直驚かされた。

次第にオガワの気持ちにも変化が現れ始めた。最初のうちは「検討させて頂きたい」と返答していたが、やがて「前向きに検討する」となり、最後には「サンプルを作ろうと思う」となった。

まだ、この時点では赤馬「OG-2」を製品化しようとは思っていなかった。数々のレザーJKTに袖を通してきたであろう多くのブラザーたちが、赤馬の「OG-2」を求めている。それほどまでに魅力的な一着に仕上がるのだろうか。それを、自分の目で確かめたくなったのだ。

さっそく、ファクトリーに連絡し、手染めの赤馬で「OG-2」のサンプル製作を依頼した。馬革はサンプル用に確保していたストックがあったが、ジッパーはオガワのサイズ、つまりサイズ38の長さで新たに発注しなければいけない。だが、昨今の不安定な社会情勢と流通事情はジッパー業界にまで影響し、通常よりも手配に時間が掛かる結果となった。サンプルのお披露目が遅くなったのは、そんな状況も影響している。

これでも長年、アメカジ雑誌の編集長を務めてきた男だ。圧倒的に多くのレザーJKTに接してきた。一般の方々に比べれば、良し悪しを見極める目を持っている自信があった。だが、そんな自信など、何の役にも立たないことを思い知らされた。

抜群にカッコいい。

ファクトリーから届いた赤馬「OG-2」のサンプルを目にした瞬間の率直な感想だ。さっそく袖を通し、鏡の前に走る。まったく違和感がない。それどころか、ワクワクしている自分がいる。「食わず嫌い」と言う言葉があるが、これはまさに「袖を通さず嫌い」である。

サンプルが届いたのは、梅雨とは思えない猛暑日が続いていた時期だった。エアコンの温度を16度に設定し、キンキンに冷やした仕事部屋で着用テストに入る。自宅にいる時は、風呂と食事、そして就寝時以外は、ほとんど袖を通して過ごした。昼寝の時も着たままだ。

柔らかく馴染みやすい赤馬は、次第にオガワの体を記憶し、シワを刻み、得も言われぬ表情を見せ始めた。掲載している印刷による写真では、鮮やかな色合いや質感はお伝えできていないと思うが、実物は惚れ惚れするほど素晴らしい。

6月23日にインスタグラム(@hi.ogawa)にポストしたところ、過去最多となる2000以上の「いいね」を頂いた。赤馬「OG-2」に対するマイナスなイメージを、心の内で勝手に植え付けていた自分が情けない。

一方で、ブラザーと共にプロダクトを作り上げているという感覚を、肌で感じることができたことは最高の悦びでもある。きっと、生涯忘れられない一着になるだろう。