オリジナルの生地を仕込む。

「OG-17」Wabash Pants

厚過ぎず、薄過ぎず。

岡山桃太郎空港に到着し、真っ先に向かったのは児島の美鈴テキスタイル。星の数ほど存在する生地の中から、オガワの脳内イメージにリンクする一枚を提案してくれる鈴木代表は、オージーブロスのモノ作りに欠かせない存在だ。

色を付けるのではなく、抜染によってストライプを表現したウォバッシュ生地は、汚れが目立ちにくく、100年以上も前からワークウエアに使われてきた歴史のある生地だ。

現在では、アメカジ衣料だけでなく様々なジャンルで使われる人気のマテリアル。ゆえに既製生地として数種類が流通しているが、その大半は8オンスや10オンスなどライトオンスだ。

「Daytona BROS」のオリジナルモデルとして製作したウォバッシュパンツも、10オンス前後の既製生地を使ったと記憶している。だが、今回はもう少し厚みが欲しい。

前回レポートでお伝えしたように、目指すのは、厚過ぎず、薄過ぎず、一年中穿けるウォバッシュパンツだ。夏場でも穿くことを躊躇わず、冬場でも寒さでブルブルしない、絶妙な生地感。

オガワの理想、13オンス。

だが、残念ながら理想通りのウォバッシュ生地は流通していない。悩むオガワに鈴木代表が提案してくれた。「オリジナルで作ってみてはどうか」と。豊富に存在する13オンスデニムの中から理想の生地を選び出し、抜染を施してオリジナルのウォバッシュ生地を作るという提案だ。

抜染コストは掛かるが、確実に理想のウォバッシュ生地が手に入る。

決して珍しいことではなく、資金力のある大手ブランドにとっては常套手段。だが「Original Garment Brothers」はオガワの個人商店的存在だ。何十反もの生地を一度に使い切るほどの生産数もない。当然、抜染する生地が少量であればあるほどコストは割高になる。

理想か。コストか。

規模に関わらず、モノ作りを生業としていれば常について回る。そんな時、いつもこの言葉がオガワの背中を力強く押してくれる。

不特定多数よりも、特定少数のブラザーと楽しむモノ作り。

オガワが脳内に描く「今この瞬間のベスト」をカタチにし、賛同してくれた特定少数のブラザーと楽しむ。これこそが「Original Garment Brothers」の揺るぎない存在意義だ。

オリジナルのウォバッシュ生地を仕込むことに決めた。

次なるは、ベースとなる13オンスのデニム生地を選ぶ。色味、ムラ感、手触り、硬さ……、鈴木代表にオガワのイメージを伝え、候補の生地を提案してもらう。目の前に並べられた生地サンプルを、ひたすら握り、揉み、撫でる。その繰り返し。

そして、今回もワクワクする生地に出会うことができた。

13ozスラブローテンションデニム。

スラブ糸とは太さにムラのある糸のこと。しっかりと撚った部分と甘く撚った部分を意図的に作った、太さが不均一な糸だ。スラブ糸を使い、旧式力織機でローテンションで織り上げることで、ザラ感、ムラ感の強い表情豊かなデニム生地が完成する。

このデニム生地に、抜染によるウォバッシュストライプを施す。コシも強いが、13オンスなので穿き心地は快適。色味は濃色、メリハリの効いた色落ちも楽しめる。

とは言え、仕上がりを確認せず、いきなりすべての生地を仕込むのはリスクがある。モノ作りに想定外のトラブルは付き物だ。とりあえず一反、抜染を施し、オリジナルのウォバッシュ生地を作ってもらうことにした。