キズが付かないリベット。

「OG-17」Wabash Pants

最大の問題点を克服する。

オガワの指先が軟弱になったのか。キズへの恐怖心が増したのか。

「Original Garment Brothers」の過去のプロダクトにも多用してきた、突起のある打ち抜きリベット。言わずと知れた、アメリカンカジュアルの超定番パーツだ。何十年間も慣れ親しんできたリベットの突起が、急に気になり始めた。

冬場、悴んだ手をフロントポケットに突っ込もうとした時、リベットの突起が擦れて痛みを感じたブラザーも多いだろう。バックポケットのリベットが、自宅のソファやクルマのシートに傷を付けないか心配することもあるだろう。

10年以上愛用してきたウォバッシュパンツのバックポケットも例に漏れず、突起のあるリベットで補強されている。そのため、相棒ラムの本革シートを傷付けないように、乗降時は細心の注意を払ってきた。

小さな手間は、やがて大きなストレスになる。

新たなウォバッシュパンツを製作するにあたり、このリベット問題を克服することは最重要課題でもあった。

オリジナルリベットを作る。

向かった先は、YKKスナップファスナー株式会社の児島支店。オージーブロスの各プロダクトで使用している刻印入りのオリジナルボタンも同社で製作して頂いている。

膨大な種類があるリベットの中で、オガワのお目当ては突起の無いリベット。手が触れても痛みを感じず、相棒ラムの本革シートを傷付けることのない、フラットなリベットだ。

さすがは「世界のYKK 」、一口に「突起が無い」と言っても、デザイン、素材……、多種多様なタイプをラインナップしている。その中からオガワが選び出したリベットが上写真。

専用マシンで打ち込んだ際に、突起部分が潰されてフラットになる。指先で触っても、痛みはもちろん、引っ掛かりも皆無。それでいて、味わいのある佇まい。経年変化も楽しめる。

当初、この既製リベットをそのまま使おうと考えていたが、見れば見るほど、脳内の片隅に僅かな違和感が生まれる。

理由はすぐにわかった。表情に乏しいのだ。突起による凹凸が無いため、ツルっとしている。経年で変色すれば風合いが増すことも理解しているが、もう少し表情が欲しい。

ならば作ろう。ウォバッシュパンツだけでなく、これから生産が始まる「OG-7」や「OG-16」にも同リベットを使うことを考えれば、高額な金型コストも惜しくはない。

今まで何度もお伝えしてきたが、自分が手掛けるプロダクトに「Original Garment Brothers」の名を大々的に入れることは好きではない。だが、リベットにさりげなく刻まれた文字が「らしさ」を演出することも、揺るぎない事実だ。

文字列はどうするか。フォントや太さはどうするか。横浜の自宅に戻り、イラストレーターを使い、慣れないデザイン作業。完成したデザインデータを担当者に送り、待つこと1か月半。「O-G-BROS」の文字が刻印されたオリジナルリベットが到着した。

その数、7044個。当分リベットには困らないだろう。