理想がカタチになる瞬間。

「OG-17」Wabash Pants

アパレルナンバの職人技。

生地の仕込み、パターン製作、縫製、洗い加工。岡山児島における、すべてのスケジュール管理を行ってくれているのが、アパレルナンバの難波社長だ。雑誌編集長時代から公私共にお世話になり、かれこれ15年以上の付き合いになる。オガワにとって岡山出張は、ワクワクに満ち溢れた「大人の遠足」のようなものだ。

幾多の縫製ファクトリーが存在する岡山児島において、トップクラスの技術力、設備、規模を誇るアパレルナンバ。今回のウォバッシュパンツも、彼らの手によって縫い上げられる。

品番は「OG-17」。全工程のごく一部ではあるが、オガワが脳内で描いた、理想のウォバッシュパンツがカタチになるプロセスをレポートする。

Making of OG-17

13オンスのスラブローテンションデニムに、抜染を施したオリジナルのウォバッシュ生地。サンプル製作、現物確認のため、まずは一反だけ仕込んだが、ムラ、ザラ感、コシ、手触り、そして色の濃さ、すべてにおいてドンピシャリ。素晴らしい生地が完成した。

生地にパターンを置き、パーツを切り出していく。2020年に発表したデニムパンツ「OG-10」では、無理をして32インチのサンプルを製作し、ひどく後悔した。その反省を踏まえ、今回は鏡に映る己の体を直視し、34インチを選んだ。

フロントポケットのスレーキ、バックポケットの補強はブラックのヘリンボーン生地。イメージ通りの既製生地が無いので、他色をブラックに独自に染めて使っている。

巻縫い部はトリプルステッチ。長年愛用してきたウォバッシュパンツを踏襲し、センターは生成色、両サイドにレッドの縫製糸を使う。

ウォレットを収めるバックポケットはダメージを受けやすい。内部全面に補強布を施すことで、耐久性を格段に向上させている。

フロントポケットのスレーキを縫い付ける。愛用する「iPhone 13 Pro」はバックポケットではなく、常にフロントポケットに入れている。そのため、充分な深さを確保している。

フロントはジッパーフライ。ジッパー取り付け部には芯材を貼り合わせて、耐久性を高めている。

前立てのステッチは、専用のガイドを使って縫い進める。美しい仕上がりのための、ひと手間。

ヨークを縫い合わせた後、左右の後身頃をドッキング。共に、トリプルステッチの巻き縫い。

アウトシームを巻き縫いして、前後身頃を繋ぎ合わせる。片足の裾から縫い始め、ウエストまで進んだら糸を切らずに、もう片足のウエストに入り、裾に向かって縫い進める。最後に糸を切って、左右を切り離す。効率が良い。

続いて内側、インシームを巻き縫する。アウトシーム同様、片足の裾から縫い始め、股下を通り、もう片足の裾へ向かう。

ウエストの帯付け。帯状にカットした生地が真鍮製のラッパを通過することで折り曲げられ、美しく縫い付けられていく。

ベルトループを仮留め。取り付け位置も細かく設定している。ディテール紹介で詳しく説明するが「中高」と呼ばれる中央が盛り上がった形状。

ベルトループを閂止め(かんぬきどめ)でガッチリと固定する。同様にジッパー下も閂止めで補強する。

希少なユニオンスペシャルを使い、裾をチェーンステッチで仕上げる。穿き込むことで捻れが生じ、美しいパッカリングが現れる。

フロントボタンとリベットを取り付ける。撮影時、オリジナルリベットが完成していないため、このサンプルには無刻印のリベットを使っている。ボタンホールは別の縫い場に持ち込み、「後メス」と呼ばれる特殊なマシンで開ける。

完成したウォバッシュパンツの各部を測り、設定した寸法に仕上がっているかを確認する。縫い伸びや縫い縮みなど、縫製によって狙った寸法と誤差が発生する場合もあるが、今回は問題なし。