真鍮バックルを作る。

「OG-25」「OG-26」Bucle & studs Belt

最高のベルトには、最高のバックルを。

スタッズベルトは完成した。次なるはバックルの製作である。巷では既成のバックルをセットして販売されることも多いが、やはり最高のベルトには最高のバックルを合わせたい。

コストや効率よりも、愚直なまでに自分が欲しいモノを追求する。それが「Original Garment Brothers」のモノ作りである。

14年振りの再会だった。2011年、編集長を務めていた「Daytona BROS」のオリジナルアクセサリーの製作を手掛けてくれた、ひとりの男。

シリーエッセンス代表、椿谷考司氏。独自の世界観、個性に満ち溢れた唯一無二の作品を創造する、職人にしてアーティスト。緻密な造形を得意とする椿谷氏に、あえてシンプルかつ無骨なバックルを依頼したくなったのだ。

2025年1月、東京有楽町。お互い個性が強い風貌ゆえ、14年振りの再会も迷うことなく落ち合うことができた。さっそく近場の珈琲店に入り、大きさ比較用の見本として持参したバックルとベルトを広げ、脳内に描いた理想のバックル像を熱く語る。

事前に「槌目バックルを作りたい」と伝えていたこともあり、椿谷氏も槌目の見本となるバックルを持参してくれた。

素材は真鍮。厚みと重量があり、板をくり抜いたような直線的かつ無骨なデザイン。そして、表面に槌目を入れること。槌目とはハンマーなどで叩いた不規則な模様のこと。さらに、バックルの幅と高さのリクエストも伝え、まずはファーストサンプルを製作してもらうことにした。

数日後、椿谷氏から作業途中の写真が送られてきた。写真を開いた瞬間、アドレナリンが溢れ出す。

一枚の真鍮板を切り出し、無数の槌目を打ち込んでいく。無機質な素材に、魂が宿る瞬間が記録されていた。オガワが脳内で描いた理想のバックルが、そこにあった。

その後、完成したサンプル送ってもらい現物確認。気になった箇所を書面にまとめ、椿谷氏に修正を依頼した。大きな修正点はふたつ。「エッジの仕上げ」と「槌目の大きさ」だ

ファーストサンプルでは四隅にアールを付け、エッジに向かい次第に薄くなっている。定石通りの仕上げではあるが、オガワがこのバックルに求めるのは「板感」「塊感」だ。セカンドサンプルではエッジを立たせ、角張った雰囲気に修正してもらうことにした。

もうひとつの修正点は、槌目の大きさ。ファーストサンプルのバックルの中で「理想の槌目」「細か過ぎる槌目」それぞれの箇所を椿谷氏に伝え、セカンドサンプルに反映してもらうことにした。

セカンドサンプルを作る。

セカンドサンプルでは本生産に向けてワックスで原型を作る。椿谷氏から、作業途中の報告が逐一LINEで届く。本当に有り難く、これほど頼もしいことはない。

まだ槌目が打たれていないワックス原型だが、明らかにファーストサンプルよりエッジが立っている。オガワが求める「板感」「塊感」が格段に増した。

槌目に関しては、オガワが希望する大きさを共有すべく、実際の真鍮板に打ち込んでくれた。椿谷氏の細かな配慮が本当に嬉しい。

バックル裏面には「O.G.BROTHERS」の文字を手彫りしてもらった。味わいのある書体、人間味が感じられる手彫りはオガワの大好物だ。だが、同時に若干の違和感も覚えた。「E」が他の文字と比較して少し幅狭になっていることが気になった。

「このままでもいいんじゃないか」「椿谷氏の作業を増やしてしまうぞ」と脳内に潜むリトルオガワが囁いた。だが、この先10年20年30年、オガワがジジィになるまで使い続けられるプロダクトだ。「今この瞬間の理想形」を作り、最大の愛着を持って使い続けたい。申し訳ない気持ちを抱えつつ椿谷氏に伝えたところ、すぐに修正して写真を送ってくれた。

オガワのワガママはさらに続く。

本生産時は槌目も含めて鋳造で成形するが、オガワの理想……いや願望は、個々のバックルがオンリーワンのプロダクトであること。そこで鋳造後、椿谷氏が個々のバックルに手作業で槌目を加え、唯一無二の存在に昇華させることにした。

複数個を並べて凝視しない限り、その違いに気付くことはないだろう。それほど僅かな表情の違い。一方で、椿谷氏の作業に掛かる手間と時間は格段に増す。それでも、今考えうる最高のバックル、唯一無二のバックルをブラザーに届けたい。

この面倒な要望を椿谷氏に伝えたところ、二つ返事で快諾してくれた。どこまでもオガワのワガママに付き合ってくれる椿谷氏には、本当に感謝しかない。