「邪道」という「正道」。
品番「OG-15」。2021年、新たなラインナップに加えるプロダクト。レザー製フライトJKTを代表する「A-2」をモチーフに、独自の解釈で仕立てる一着だ。
「A-2」が誕生した当時から、一般服飾メーカーが「民間向けA-2」として「官給品」とは異なるモデルを作ることがあった。また、高官が自費で自分用の一着をあつらえることもあった。
今回の「OG-15」も、その感覚に近いかもしれない。ただし「民間向け」でも「高官向け」でもなく、「オヤジ向け」。そこはしっかりと強調しておきたい。非常に重要なポイントなのだ。
カルト的なファンが多い「A-2」だけに、賛否両論あるかもしれない。「邪道」と言われるかもしれない。だが、己が理想とする脳内イメージを具現化することこそ「Original Garment Brothers」のモノ作り。それこそが「正道」なのだ。
「OG-15」に対する思いは、「The Magazine 001」(完売)で余すことなく書き連ねた。すでに記事を読んでくれたブラザーも多いと思うが、まだ目にしていない方のために、一部修正、加筆した記事をあらためて掲載させて頂く。
<以下、マガジン001より抜粋>
「TYPE A-2」。説明するまでもなく、1931年にアメリカ陸軍航空隊に制式採用された夏用フライトジャケットである。数あるフライトJKTにおいて、人気、知名度ともにナンバーワン。多くのブランドから復刻モデルがリリースされ、世界中の愛好家を楽しませている。
素材は主に馬革が使われていた。ミルスペックによって規格が細かく定められていたが、ラフウェアやデュボウなど、納入業者の解釈によってディテールには若干の相違があった。それもまた、愛好家を熱狂させる一因となっている。
学生時代、アルバイト代を握りしめ、当時は代官山の奥にひっそりと店舗を構えていたザ・リアルマッコイズでラセットブラウンの「A-2」を手に入れた。体に吸い付くタイトシルエット。赤茶色に底光りする馬革。シワひとつない丁寧な仕立て。そして匂い。一瞬で虜になった。以来、数々の「A-2」に袖を通してきた。
「Original Garment Brothers」がレザーJKTなどに縫い付けるオリジナルラベル。黒地にゴールド文字のそれは、紛れもなく「A-2」のラベルをモチーフにしている。
ブラザーから「A-2は作らないのか?」という質問を受けることがある。答えはノーだ。今、「A-2」が欲しいと思ったら、間違いなく市場に流通している復刻モデルを購入する。完成度は極めて高い。オガワが「A-2」を手掛けたところで、それらを超える一着を作ることはできない。知識、経験、体制、資金……、すべてにおいて到底かなわない。
「A-2」は大好きだ。その気持ちに変わりはない。だが、今の自分にとって完璧かと聞かれれば、そうでもない。
市場に流通しているモデルを購入することが、理想のレザーJKTを手に入れる唯一の手段だった頃と違い、今は自分で企画し、思い通りの一着を作ることができる。本当の意味での「理想の一着」を追求できる。
ならば、作ろうじゃないか。不要なディテール、嫌いなディテールを排し、独自の解釈で仕立てる「A-2」モチーフの一着を。この時のために、長年、イメージを温めてきた。
色は、初めて手にした「A-2」と同じ、赤茶がいい。「Original Garment Brothers」初となるブラウンの馬革だ。
上袖と下袖の2枚の馬革だけで構成されたシンプルな袖。戦時中、ペイントのキャンバスにもなった一枚革の背中。フロントに縫い付けられた、シンプルなパッチポケット。「A-2」の基本デザインは踏襲する。
だが、不要なディテールは躊躇なく省く。まずは、肩のエポレット。「A-2」には、両肩に階級章などを付けるための「エポレット」と呼ばれるパーツが装備されている。だが、オガワに階級はない。当然、省く。
次は首元のフック。「A-2」の首元には金属製フックが装着され、左右を留めることができる。だが、脂が乗ったオヤジ世代がこのフックを使おうものなら、頚動脈が圧迫され危ない。当時の軍人を真似てフックにホイッスルを取り付ける愛好家もいるが、笛にも興味がない。省くことにする。
当時のパイロットは、風圧という見えない敵とも戦っていた。狭いコクピット内、風圧でバタつく襟はパイロットの顎を傷付けることがあった。そのため「A-2」はドットボタンで襟を固定できるようになっている。だが、オガワの日常生活では激しい風圧を浴びる機会はない。これも、省く。
上空の冷たい風がジャケット内に侵入し、体力を消耗しないよう、前立てがジッパーを覆うように設計されている。決して嫌いなディテールではないが、フロントを閉じず、ラフに羽織る時には邪魔になる。やはり「OG-2」のようにシンプルなフロントが好みだ。
よって、前立ても省略しよう。
<次のレポートに続く>