エイジングと着心地を追求する裁断。
馬革の表面を縦横無尽に走るシワや立体的なシボが、たまらなく好きだ。「Original Garment Brothers」のレザーJKTは、一般的な皮革衣料では敬遠されるシワやシボを積極的に使うことで、荒々しく個性的なエイジングを楽しめるプロダクトに仕上げている。
ヴィンテージの「A-2」を見ると、襟やポケットに、まるでヒビ割れのような荒々しいシボが使われていることがある。これが抜群にカッコいいのだ。
パイロットの戦闘服として大量生産されていた戦時中、エイジングのことを考慮して裁断が行われていたはずがない。身頃や袖に比べてパーツが小さい襟やポケットは、効率を考えて馬革の端、つまりシワやシボが多い部分から裁断されることも多かったのだろう。そう個人的に推測している。
「OG-15」においても、襟やポケットにシワやシボが多い部位を使うことにした。だが、ヴィンテージの荒々しい佇まいを再現するだけでなく、オガワなりの明確な目的がある。
レザーJKTにおいて襟は非常に重要なディテールだ。凛とした襟は力強く、洗練されたスタイルを演出してくれる。一方で、襟は肌が直接触れる数少ないパーツだ。あまり硬い馬革を襟に使ってしまうと、時として着心地を損ねることにもなる。
「OG-15」は「A-2」をモチーフにした、究極の「オヤジJKT」を目指している。着心地へのストレスは極力避けたい。男性的な首元を演出しつつ、馴染みの良い襟がベスト。そのためには、シワやシボの柔らかい革質が最適なのだ。
ポケットも然り。あまりにコシが強い部位をポケットに使ってしまうと、着用時、板を貼り付けたように突っ張ってしまう。身頃の動きにしなやかに追従してくれる、これまた柔らかい革質が理想だ。
では、戦時中の「A-2」のように、生産効率を第一に考えてシボの多い部位を使えばいいのか。それは違う。シボの部分は繊維密度が低いことが多い。繊維密度が高い部位に比べると強度は劣る。
長年の着用に耐えうる確かな強度を保ちつつ、理想の表情と柔軟さを備えた部位を見極め、ピンポイントで裁断する。結果、生産効率は著しく悪くなる。だが、ブラザーに最高の相棒を届けるためには、手間も時間も惜しむわけにはいかない。
シンプルを貫く「オヤジJKT」でも、一着を構成するために必要な型紙は多い。その型紙を一枚一枚、馬革の上に配置し、魂を込めて刀で断つ。
「OG-15」をはじめ「Original Garment Brothers」のすべてのレザーJKTは、この道数十年、ワイツーレザーを影で支え続けてきた百戦錬磨の男の手によって裁断されている。
そのことを思い返す度に、我が相棒に対する愛情は深まっていくのだ。