馬革を使い切る使命。

「OG-27」Horsehide Pouch&Case

あったら嬉しいモノ作り。

毎年リリースの度に多くのオーダーを頂いている、馬革バッグ「OG-6」。製作時に出た端材、つまり余り革の有効活用について、一昨年からファクトリーと打ち合わせを重ねてきた。

「OG-6」製作時、大きな半裁革を見渡し、傷の少ない綺麗な部位、シワやシボが少ない部位を見極め、パーツの裁断を行う。いかに多くのバッグが作れるかではなく、仕上がり時の美しさを最優先した裁断。その結果、多くの余り革が生まれることになる。

言うまでもなく、我々が使う「革」という素材は、生き物の「皮」である。可能な限り無駄にすることなく、感謝の気持ちを持って使い切ることが、革を扱う者の使命でもあると考えている。

「OG-6」に使う馬革は、世界屈指の馬革タンナーとして知られる新喜皮革が手掛ける、フルベジタブルタンニン鞣しの馬革だ。「OG-6」 のパーツに使われなかった部分も、当然ながら品質は極めて高い。強度に影響がない小さな傷、シワやシボは天然皮革の個性、醍醐味でもある。

この余り革で何が作れるか?

裁断後の余り革であるため、大判のパーツを確保することはできない。革小物と言えば、時計ベルトやキーホルダーが思い付くが、腕時計はブレス派、キーホルダーはタフな真鍮製を長年愛用し続けている。自分が使わないモノを作っても意味がない。

実際に余った馬革を見ながら、オガワ自身の日常生活において「あったら嬉しいモノ」を脳内に羅列する。そして、最終的に3つのプロダクトに絞った。

ストレスを解消するポーチ。

馬革バッグ「OG-6」やクロコバッグ「OG-19」を愛用するオガワ。多くのモノを持ち歩くことが嫌いなため、バッグには必要最低限のモノしか入れていない。

ボールペン1本と定規を入れたペンケース。ボールペンは箱買いして愛用する「uni」。ごくごく普通のこれが一番。定規は10年以上使用している「Raymay」の15cm。

バッグ内部のサイドポケットには、名刺入れとA7サイズの小さなメモ帳。基本的にはiPhoneのメモに記録するが、忘れてはいけない重要事項はノートに書き留める。

その他、iPhoneの充電ケーブル、AirPods、サンプルの寸法を測るメジャー。夏場は、メタボなオガワに欠かせない扇子も加わる。安価な黒い扇子だが、数本ストックするほど気に入っている。

撮影を行う時には、さらにカメラ「FUJI X-T5」とレンズ1本「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN」を放り込む。

必要最低限とは言っても、意外と持ち物が多いことに気付く。特にカメラ&レンズを入れるとバッグ内が煩雑になり、ストレスを感じていた。そこで、名刺入れ、扇子を除く常備品を収納できるポーチを作ることにした。

不必要に大きなサイズは好みではない。収納ポーチとしての役割を果たしつつ、可能な限りコンパクトにしたい。よって、もっとも長尺な15cm定規がギリギリ納まるサイズにすることにした。

「名刺入れ」にも「ウォレット」にもなるケース。

どうせなら、名刺入れも馬革で作りたい。そう思うのは至極当然の成り行きだった。雑誌編集者時代から長年使ってきた黒いコードバンの名刺入れも気に入っているが、自分で作るプロダクトには敵わない。

とは言え、である。実のところオガワはほとんど名刺を使わない。「Original Garment Brothers」のモノ作りに携わってくれる職人は、みんな雑誌編集者時代に知り合った信頼のおける男たちだ。極度な人見知りゆえ、積極的に新たな出会いや繋がりも求めてもいない。独立した2018年に100枚製作した名刺が、7年経った今でも半数以上残っているほどである。

自分自身の用途や環境を考慮し、名刺入れとしての限定的なプロダクトではなく、クレジットカードや小銭入れとしても使える小さなケースを作ることにした。

出張でビジネスホテルに滞在していると、深夜に小腹が空くことがある。メタボに磨きを掛けてしまう罪悪感を抱きつつ、誘惑に負け、ついついコンビニに足が向いてしまう。そんな時にこのカードケースは重宝する。クレジットカード一枚、緊急用に万札を一枚、これだけでいい。極小ウォレットとしての役目を果たす。

「スマホ決済にすればカードケースすら必要ない」そんな声も聞こえてくるが、昭和生まれのオガワは「ちゃんと決済できているのか?」「反応しなかったらどうすればいいんだ?」と不安で仕方ない。やはり、使い慣れたクレジットカードや現金が安心するのである。

リリースはまだ先になるが……。

ポーチとカードケースの他に、革巻きスタッズハンガー「OG-21」も作ることにした。既にサンプル(上写真)が完成しているが、ブラックの馬革と真鍮の太鼓鋲の組み合わせが抜群に渋い。しかも、茶下地の馬革だ。何百回、何千回とジャケットを着脱することで、肩周りが擦れ、下地のブラウンが現れ、最高のエイジングを楽しませてくれるに違いない。

一見すると大きな革面積が必要に思えるが、構成パーツは細長く、「OG-6」のパーツ裁断後の馬革からも十分にパーツが確保できる。しかも、水に浸し、伸ばしながらハンガー本体に巻き付けるため、シワやシボも気にならなくなる。一石二鳥のプロダクトである。

しかしながら、製作には膨大な手間と時間が掛かるため、リリースはもうしばらく先になることをお伝えしておきたい。