「OG-15」に魂を宿す。

Leather JKT 2021(End)

職人魂が投影されるプロダクト。

ただの革ジャンじゃないか。そう言う人もいるだろう。確かに「ただの革ジャン」に過ぎない。だが、一着のジャケットに注ぎ込まれる職人たちの手仕事を目の当たりにすると、「魂が宿る」と言う言葉が、カッコ付けの形容ではないことを体で感じることができる。

「Original Garment Brothers」のレザーJKTを共に作り上げてくれるワイツーレザーの職人たちは、「最高のモノ作り」を貪欲に追求するプロフェッショナルたちだ。

「OG-15」だけでなく、今季リリースする4モデルすべてのレザーJKTにおいて、仕上がり、風合い、着心地、強度の向上のために、日々、挑戦と検証を繰り返している。その職人としての生き様に、オガワは惚れ込んでいる。

昨年のカーコート「OG-12」に続き、今年は「OG-15」のサンプル製作の現場に立ち会った。この限られたスペースですべてを紹介することはできないが、見えない部分にも決して手を抜かない、丁寧で真面目なモノ作りの現場をレポートする。

副資材は最高の名脇役。

手染めの馬革を主役とするならば、付属パーツ類は名脇役となる。これらが存在しなければ「OG-15」は成立せず、渾身の馬革も意味を成さない。

シャリ感が強い焦茶色のリブ。袖は「A-2」のお約束ディテールである二段編み。もう少し明るい茶色も検討したが、焦茶色で正解。ジャケットの雰囲気が引き締まり、何よりもオヤジJKTらしい。

このファーストサンプルで使用した袖リブが若干長かったため、1.5センチほど短い袖リブを特注で用意することにした。次の最終レポートで紹介している「OG-15」には、1.5センチ短くした本番仕様のリブを装着している。

「OG-2」「OG-5」「OG-12」の縫製には同品番のブラウン糸を使っているが、「OG-15」では、少しだけ明るいブラウン糸を使うことにした。

「OG-15」のフロントポケットには、「A-2」同様のドットボタンを装着する。四つ割れタイプを取り寄せ、手作業でセッティング。見えない裏部分には補強材を挟み込み、強度を高めている。

脇下に通気用のアイレットを片側2個ずつ装着。「A-2」に倣い、ワイツーレザーが定番モデルで使用するアイレットよりも径が小さいタイプを取り寄せた。

ジッパーは「OG-2」と同型のユニバーサル。機能性、耐久性、エイジング、すべてにおいて実証済みなので、奇をてらって変更する必要はない。

新たな相棒が生まれる現場。

裁断された各パーツは、縫製前に漉き加工を施す。縫製部分や折り返し部分などを適正な厚みに整えることで、より美しい仕上がりになる。

ポケットフラップは袋状に縫い合わせるが、少し反っているのがお分かりだろうか。着用時に体のラインにクセが付きやすいように、わざと反らせて縫い合わせている。

さらに曲線部分をギザギザにカットすることで、表に返した時に革の収まりが良く、美しいアールが表現できる。

完成したポケットフラップだが、曲線デザイン、縫い代に納得がいかず、結局、型紙から作り直すことにした。最終レポートで詳しく解説。

前身頃にポケットとフラップを縫い付ける。フラップは縫い付けた後に、余分な部分を丁寧にカットする。これによりフラップの落ち着きが良くなる。物を入れてポケットが少し膨らんだ時に、ボタンのオスとメスがピッタリ合うようになっている。

上袖と下袖の2枚のパーツで構成されるアームの片側を縫い合わせる。革の取り都合から、下袖を2枚のパーツに分割することも多いが、オガワはシンプルなアームが大好物。馬革の取り都合は悪くなるが、オージーブロスのすべてのレザーJKTのアームは上袖と下袖の2枚のパーツのみで構成している。

ハンマーで叩き、しっかりとクセを付けてから本縫い。

ショルダー部分で前身頃と後身頃を縫い合わせる。見ての通り、ジッパーを装着するフロント部分には、強度向上と型崩れ防止のために芯材(黒いテープ)を貼り合わせている。

先ほど、上袖と下袖の片側を縫い合わせた袖を、アームホール部で身頃に縫い合わせる。縫い代部分に切り込みを入れて腕の動きを良くしつつ、負担の掛かるアームホール後側(背中側)には補強材を貼って強度を高める。

前後身頃、上袖、下袖が繋がった図。手染めの馬革なので、各パーツの色ムラや色違いが良くわかる。一般的な皮革衣料ではNGとされる色ムラこそ「OG-15」最大の魅力。オーダー時には、くれぐれもその点をご理解頂きたい。

ウエスト部から前後身頃を縫い合わせていく。そのまま、脇下を通り、上袖と下袖を縫い合わせる。これで袖が筒状になった。

地縫いした後に本縫い。ジャケット表面から見えるステッチだけに、歪みは禁物。「A-2」の袖下は脇から約5センチほどのところで縫い止まっているモデルが多いので「OG-15」でも踏襲することにした。次のレポートでディテール写真を掲載。

裏返し状態なのでわかりにくいが、袖にリブを縫い付ける。

伸縮性のあるリブを少し伸ばしながら、バランスよく裾に縫い付けていく。バランスが悪いと、仕上がった時に歪みが生じる。

フロントジッパーを装着。

あらかじめ仕立てておいたライニングを装着。「A-2」と同様に袖までコットン素材。「OG-15」に限らず、オガワが企画するレザーJKTのライニングは、すべて袖までコットン素材に統一している。Tシャツ着用時、汗をかくとペタペタと腕にまとわりつくナイロン素材が苦手。完全に好みの問題だ。

襟の取り付けを残し、ジャケットの姿に仕上がった「OG-15」。トルソーに着させて、全体のバランスを確認する。

ボディに問題がなければ、最後に襟を取り付けて完成となる。オガワが脳内に描いていたイメージ通りの「オヤジJKT」が完成した。

徹底的に、追い込む。

だが、感傷に浸っている暇はない。縫い上がり、試着して5分後には修正に向けての協議に入っていた。ファーストサンプルのため修正すべき点は多いが、もっとも大きな変更点は「襟」だ。

襟について、少し解説したい。

ミルスペックによって細かく仕様が決められていたにも関わらず、大戦当時の「A-2」は納入業者(コントラクター)によって「台襟付き」「台襟無し」が存在していた。「台襟付き」は「ROUGH WEAR」(ラフウェア)、「台襟無し」は「J. A. DUBOW」(デュボウ)が有名だ。

台襟を装着した「A-2」は襟の位置が高くなるため、ジッパーを上方まで閉めると顎に干渉することがある。そのため、襟に折り癖を付けて着用することが、愛好家の愉しみのひとつとして知られている。

「OG-15」も、台襟付きでファーストサンプルを作ってみた。だが、満足できる着心地ではなかった。

「OG-15」の手染めの馬革は、驚くほどしなやかで柔らかい。普段はレザーJKTのフロントを閉めないオガワでも閉めたくなるほど快適だ。だが、やはり台襟で持ち上がった襟が気になる。干渉するというほど大袈裟ではなく、首を左右に向けると少し触れる程度。だが、少しのストレスがやがて大きなストレスに発展することも知っている。

上写真はファーストサンプルを現場で着用したオガワの写真。見るに耐えないダルマのようなボディで申し訳ないが、特にフロントを閉めた時に襟が高い位置に来ることがわかるだろう。

パターンから作り直すことになるが、「台襟付き」から「台襟無し」に変更することにした。

次の最終レポート「OG-15 オーダー開始」で着用している「OG-15」は、襟を新たに作り直し、台襟無しで付け直した一着。比較すると、襟位置の違いは歴然だ。

仕上がりチェックのために、ファーストサンプル(サイズ38)を試着したワイツーレザーの梁本社長、縫製職人である祐三氏の姿も掲載しておきたい。お二人とも普通体型なので、オガワの着用画像よりもサイズ選びの参考になるだろう。そして「OG-15」が悔しいほど似合っている。だが、おデコのテカり具合を含め、オヤジ感では圧倒的にオガワが勝っている。

梁本貴雄氏(ワイツーレザー社長)
身長174センチ
体重67キロ
※本人いわく「腕は同じ身長の平均値より2センチほど長い」とのこと。

祐三氏(縫製職人)
身長170センチ
体重62キロ

見えない部分にも手間を惜しまず、美を追求するワイツーレザーのモノ作り。その丁寧な仕事は、5年後10年後のジャケットのコンディションに確実に反映されるのだ。

次回の最終レポートでは、いよいよ「OG-15」のオーダー開始となる。