最高の環境が、最高の一着を生む。
ボタンホールの縫製には数種類が存在するが、アメカジで馴染みがあるのは二種類。ホールの端の処理が「閂止め」(カン止め)もしくは「流れ閂」。ちなみに「閂」は「かんぬき」と読む。
「流れ閂」はその名の通り、ホールの横に流れるような処理で、ジーパンやワークウエアに多用される。ダック生地で仕立てた「OG-7」も「流れ閂」なので「OG-20」も流すことに決めた。
悩んだのが、ホールの幅と流す長さ、前立ての縁からの距離。ベストなボタンホールを探るため、同じ馬革に試し縫いを行い、比較検証を行った。
ページトップの写真、4つのボタンホールはすべて異なる設定。結論は上から3番目の位置と流しの長さ。ただし「OG-20」の馬革は柔らかいため、ホール幅だけは通常よりも少し狭くすることにした。
……と、ボタンホールについてあたかも自分の知識のように書いているが、すべて梁本社長が詳しく教えてくれた。ワイツーレザーに足を運ぶ度、惜しげもなく色々な知識を教えてくれる梁本社長には本当に感謝しかない。
最高のレザーJKTを仕立てるには、最高の作業環境が欠かせない。そう考える梁本社長は、設備投資にも力を入れている。
高額な専用マシンと専門技術が必要となるため、外注で作業することが多いボタンホールの縫製。ワイツーレザーは本社ファクトリー内に専用マシンを導入し、専門技術を持った職人がその場でボタンホールの縫製を行っている。今回のような現場での比較検証は、ワイツーレザーの充実した設備なしでは行うことができなかったのだ。
ボタンホールの縫製が完了したら、オリジナルボタンを取り付けて完成。新たな馬革で仕立てた、新たな一着、「OG-20」が遂に姿を現した。
この写真、実は……。
完成した「OG-20」。想像以上の出来映えに鳥肌が立った。完成直後、興奮冷めやらぬ状態で撮影した上写真。実は、この時点で装着していたボタンの色はシルバーだったのだ。
「OG-7を馬革で仕立てる」というテーマが先行し、ブラックと迷った挙句、シルバーを選んだオガワ。だが、この写真の撮影中、裁断師の山田氏が「シルバーが少し浮くな」とポツリ。
ボタン取り付け時、預けているストックから、梁本社長が無意識にブラックボタンを持ってきたことも思い出した。それでも我を通し、シルバーのボタンを取り付けたのだった。
その夜、梁本社長や最高の仲間たちと遅くまで酒を飲み、最高に楽しい時間を過ごした。深夜、タクシーでホテルに戻り、薄暗い部屋で一息つく。ボタンが気になって仕方ない。体は疲れているがパソコンを立ち上げ、ボタンを黒く加工した。翌朝、梁本社長に送った写真が上の一枚だ。
今、この原稿を書いているオガワは、ブラックボタンに打ち替えられた「OG-20」を着ている。