児島屈指の職人集団。
「Original Garment Brothers」のレザーJKT以外のウエア類は、デニムの聖地として知られる岡山児島の「アパレルナンバ」で生産している。
数多くの縫製ファクトリーが存在する児島の中でも、トップクラスの技術力と設備を誇るアパレルナンバ。名だたるアメカジブランドだけでなく、裏原系人気ブランドなども絶大な信頼を寄せる、児島屈指の縫製ファクトリーだ。
アパレルナンバの難波社長とは「Daytona BROS」の編集長時代に知り合い、かれこれ10年以上の付き合いになる。仕事も遊びも、公私共にお世話になっている最高のパートナーだ。
「OG-10」のプロジェクトを立ち上げ、児島に出向き、難波社長と最初に打ち合わせを行ったのは、2019年12月。デニムパンツに限らず、どんなプロダクトでも一発で納得できるカタチが完成することはまずない。何度も何度もサンプルを作成し、理想形を目指す。
長年の付き合いに加え、すでにデニムJKT「OG-4」、冬用JKT「OG-7」でタッグを組んでいる難波社長は、オガワの脳内のイメージを瞬時に理解してくれる。まずは、希望のシルエット、おおよその寸法、ディテールを伝え、叩き台となるファーストサンプルを託す。
姿を現した、完全オリジナルの1本。
2020年2月、待望のファーストサンプルが届いた。興奮が抑えきれずに少々手荒く段ボールを開封し、初対面のデニムパンツを手に取る。イメージ通りの仕上がりにほくそ笑む。
深めの股上、余裕あるワタリ幅、裾までストンと落ちる直線的なシルエット。無造作に手を放り込めるフロントのポケットもイメージ通りだ。
デニムパンツは、眺めてニヤける類ではない。穿いてナンボだ。さっそく、着用テストに入る。外出時はもちろん、自宅でのデスクワーク、クルマの運転、最近ハマっている珍奇植物の植え替えなどの軽作業……。時間が許す限り、穿き続ける。
深めの股上、足の動きを邪魔しない程良いワイドシルエットは、想像以上に快適だ。鏡に映るシルエットも悪くない。脳内に描き続けてきた「骨太な1本」が、目の前に映し出されている。
「よし、これでいこう」
シルエットは決まった。
試着で気付く、新たな問題点。
一方で、問題点も浮かび上がってきた。実際に穿き込み、実際に穿いている姿を確認しなけれ気付かなかった問題点。それは、以下の3つだ。
<ポケットの角度>
この問題は、最後までオガワを大いに悩ませてくれた。ファーストサンプルでは、チノパンやスラックスと同様に、フロントポケットの開口部を立たせている。見た目も良く、手も放り込みやすい。
だが、ポケット口の高低差があるため、椅子に座った時にポケット口がポコっと浮き上がってしまうことが発覚。チノパンやスラックスのような柔らかい生地であれば気にならないかもしれないが、肉厚で硬いデニム生地の場合は非常に目立つ。
さらに、ポケット口が浮き上がることで、スレーキ(ポケット内部の生地)が丸見えだ。
まったくもって頂けない。「骨太」と「大雑把」は違う。分別のある大人が選ぶ相棒は、細部まで緻密に作り込まれた、ジェントルなプロダクトでなければいけない。当然、要修正となる。
座った時の浮き上がりを抑えるには、フロントポケットの角度を寝かせるしかない。だが、寝かせ過ぎれば手を入れづらくなる。とりあえず漠然とした数値で修正指示を伝えるが、これがベストとは限らない。地道に理想の角度を探るしかない。
<バックポケットの取り付け角度>
深夜の仕事部屋でひとり、セルフタイマーで撮影した自分の後ろ姿を見て、気になったことがある。穿いた時にバックポケットが、ほん少しだけ「ハの字」に傾いている。
ファーストサンプルでは、パンツの上端の「帯」と呼ばれるパーツとバックポケットが平行になるように取り付けられている。そのため、穿いた時に左右が少し下がり、ポケットが「ハの字」になっている。
やはり、バックポケットは穿いた時に横一線に揃った方が美しい。修正は簡単で、バックポケットを少しだけ「逆ハの字」に取り付ければいい。
10人中9人は「気にならない」かもしれない。だが、オガワは一度気になり始めたら、修正しないと気が済まない性分。よって、直す。
<バックポケットのステッチライン>
これも、自分の後ろ姿を見て気付いたことだ。このデニムパンツは、バックポケット口に「隠しリベット」を打っている。そのため、ポケットをパンツ本体に縫い付けるステッチの幅が、ポケット口付近では隠しリベットを避けるため広く、下に行くと通常幅になっている。
このステッチラインによって、バックポケットが強調され過ぎるのではないかと思ったのだ。そこで、上記のように、隠しリベット部のステッチラインを変更してみることにした。
以上、3か所の修正希望をアパレルナンバに伝え、セカンドサンプルを製作にしてもらうことにした。