フルベジ&素上げの馬革にこだわる。

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秘伝のレシピで仕込む極上素材。

動物から剥いだ「皮」を、腐敗しないようにして「革」にすることを「鞣し」(なめし)という。皮を鞣すには、鞣し剤を溶かした溶液に原皮を長時間漬け込む必要があるが、鞣し剤の違いによって「タンニン鞣し」「クロム鞣し」「コンビネーション鞣し」の3種類に分類される。

タンニン鞣しは、ミモザ、ケブラチョ、チェスナットなどの植物から抽出された鞣し剤を使う鞣し方。吸湿性に富み、染色もしやすく、使い込むほどに味わいを増すのが特徴だ。温度や湿度の影響を受けやすく、職人の経験が求められる。

クロム鞣しは、化学薬品であるクロムを鞣し剤に使うため、比較的低コスト、安定した革を生産することが可能だ。水を弾きやすく、熱にも強いため、ライダースジャケットにも多く使われている。革の断面が青白い。

コンビネーション鞣しは両方を組み合わせた鞣し方法で、タンニン鞣しには劣るものの適度な風合いを持った革を低コストで生産できる。

ワイツーレザーではモデルによって鞣し方の異なる革を使い分けているが、すべて天然の鞣し剤を用いたフルベジタブルタンニン鞣しの馬革が十八番。強度、染色のしやすさ、経年変化、すべてにおいてレザージャケットに最適な素材だ。しかも、タンナーとの直接取り引きのため、他では手に入らない、自分たちが理想とする唯一無二の馬革を使う。

フルベジタブルタンニン鞣しによるワイツーレザーの馬革は、手で握るとギュッギュッと革が鳴く。通常よりもタンニンがたっぷりと含まれているためで、抜群のコシ感と弾力性に富んでいる証し。オガワが理想とする一着には、ワイツーレザーが秘伝のレシピで仕込んだ、フルベジタブルタンニン鞣しの馬革が欠かせない。

天然のキズをデメリットとは思わない。

フルベジで鞣されたこだわりの馬革は染料で仕上げる。表面に処理を施さない素上げのため、革の表情をダイレクトに楽しむにはこれしかない。滑り感のあるマットな手触り。使い込むほどに生まれる光沢。革に魅せられた人々の物欲を満たすには十分すぎるほどの個性を持つ。

素上げの馬革は、原皮に付いた天然のキズを隠せないが、そもそもオガワはキズをデメリットと考えてはいない。レザージャケットは多かれ少なかれ着込むとキズが付く。それが風合いというものだ。天然素材の醍醐味でもある。キズが嫌なら本革を選ぶべきではない。合皮を選べばいいだけだ。「エイジングは楽しみたいがキズは嫌」というのは、どうにも理不尽な欲求に思えてならない。

余談だが、レザージャケットの仕上げとして顔料を吹き付ける方法もある。顔料を吹き付けられた革は最初からテカテカとした硬質な光沢を放ち、ゴワゴワとした厚化粧の質感となる。染料仕上げとは異なり、革の表面を顔料で覆うため、革のキズを隠せるメリットがある。ゴワついた革は少し着込んだだけでもシワグセが付きやすく、手軽にエイジングを楽しみたい人にはオススメだ。

顔料仕上げには、顔料仕上げの良さがある。だが、オガワが作る理想の一着は、シワの表情をダイレクトに楽しめるだけでなく、耐久性にもこだわりたい。1年や2年でシワくちゃになるレザージャケットには用はない。着込むほどに柔らかくなるが、コシ感は失われず、マットだった馬革にゆっくりと生まれる光沢を楽しみたい。

10年、20年の着用にも余裕で応えてくれるタフさ。今回作り上げるレザージャケットに課せられた、もうひとつの使命でもあるのだ。