コバの神と呼ばれる所以。
続いてウォレット内部の製作に取り掛かる。カード入れや小銭入れ、札入れが用意されるウォレット内部は、通常のウォレットと同様のコバ仕上げとなる。亀太郎氏の十八番だけに、仕上がりが楽しみだ。
各パーツの重なり合う部分を、革漉き機で漉いて整える。
奥はカード入れ、手前は小銭入れが縫い付けられる前の札入れ部分。
小銭入れはジッパー仕様。「OG-3」はタロン製を使ったが、今回のウォレットではユニバーサル製を採用した。
どちらも機能性と耐久性に定評がある超定番ジッパーだが、今後のモノ作りのために、使い勝手を比較したくなった。少々意地悪な理由で、今回はユニバーサル製を使う。
小銭入れを札入れにドッキングさせる(コの字型のステッチ)。写真はないが、その後、小銭入れが袋状になるように縫い合わせる
コバ磨き前の下準備を施す。亀太郎氏はカンナやヤスリを使って整えていく。まだ磨いていないが、この美しさ。
帆布を使い、目にも留まらぬスピードで磨き上げる。納得のいく光沢が現れるまで、一心不乱に革と向き合う。
差がわかりやすいように、コバの一部だけを磨いてもらった。その差は歴然。磨かれた部分は、透き通るような輝きを帯びている。
これは、もっとわかりやすい。上が磨き後、下が磨き前。レザークラフト経験者ならおわかりだろうが、これほどの光沢を、均一に生むことは非常に難しい。
コバ磨きが完了したら、いよいよ「ヘリ返し」で仕上げた外側と縫い合わせる。まずは仮置きして、ズレが生じていないか確認する。
貼り合わせる前に、菱目打ちを使って外側だけに穴を開ける。
接着剤を塗布して、外側と内側を貼り合わせる。ズレてはすべてが台無しになる。ゆっくりと貼り進めていく。
貼り合わせた後、しっかりと圧着して、接着剤が乾くのを待つ。
外側と内側が貼り合わさった状態。この時、まだ縫い穴は外側のみに開いている。
貼り合わせた後、外側に開けた穴に1本菱目打ちを差し込み、1穴ずつ、内側のパーツに穴を開けていく。
外側から内側まで、菱目打ちで一気に穴を開けようとすると、菱目打ちの構造上、菱目打ちの先端側は穴が小さく、根元側は穴が大きくなってしまう。
手間と時間は倍以上掛かるが、縫い穴の大きさを均一にして、ウォレットの耐久性を格段に高めるには、この方法しかない。
美しいものは、何度でも見せよう。ヘリ返しとコバのアップ。前出の写真と同じ状態に見えるが、すでに外側だけでなく、内側のパーツにも縫い穴が開けられている。
内側の外周に縫い穴が開いていることが確認できる。
縫製糸にもこだわった。数種類のブラウンの中から、オガワのイメージにもっとも近かった焦げ茶色の縫製糸をチョイス。
いよいよウォレットの外側と内側を縫い合わせる。亀太郎氏が普段仕立てている主なウォレットよりもピッチ幅が細かいため、縫い上げる時間もかさむ。
そして、完成。「OG-1」の馬革による「ヘリ返し」、極上の輝きを放つコバ、伝説の男による手縫い。この写真で酒が飲める。
「亀太郎氏の手縫い」という十分過ぎるインパクトを有した、新たなレザーウォレット 。上品な佇まいは、使い込むことで激変する。まさに、羊の皮を被った狼。各ディテールは、後ほどのレポートでしっかりと紹介させて頂く。
グレージング仕様の栃木サドル。
今回のウォレットに使う栃木サドルはグレージング仕様。「グレージング」とは、革の表面を磨き、艶を出すこと。新品時から艶やかな栃木サドルは、使い込むことで透明感のある飴色を楽しませてくれる。