亀太郎氏の手仕事(前編)。

「OG-8」Leather Walet(End)

技と感性こそ、すべて。

ありきたりな言葉だが、亀太郎氏がこのウォレットを仕立てた一部始終の目撃者としては、「手仕事」という言葉しか思い浮かばない。

私はハンドメイドで作られたモノが、すべて「手仕事」だとは思わない。生産効率を第一に考え、流れ作業的に作られたハンドメイド品を「手仕事」と呼んでいいのだろうか。

同じ鞣しでも、1枚1枚異なる革の状態を瞬時に把握し、下処理やコバ磨きに費やす時間、手縫いの力加減を繊細に変える匠の技。これこそが「手仕事」、そう考えている。

WEBという限られたスペースでは、亀太郎氏の「手仕事」のすべてを紹介することはできない。この場で掲載する写真は、オガワが撮影した全カットの10分の1にも満たない。だが、亀太郎氏の技と感性による「手仕事」の断片でも目撃すれば、このウォレットのポテンシャルを理解して頂けると信じている。

上の写真は、このウォレットに使われるパーツのすべて。今回は手縫いで仕立てるため、各パーツの寸法や厚みに微調整を加えているが、ウォレットに仕上がった時の大きさや厚みは、ミシン縫いの「OG-3」と変わりはない。

シンプルなウォレットゆえ、パーツ点数は少ない。たったこれだけのパーツを組み上げることで、ブラザーの心、漢たちの心に刺さるプロダクトが生まれる。モノ作りとは、実に奥が深い。

ここからは製作プロセスをダイジェストで紹介する。亀太郎氏の技、ご覧あれ。

焦らず、たっぷりと時間を掛けて、裁断したパーツに下処理を施す。地味な作業だが、下処理が仕上がりの見栄えに大きく影響することを、匠は知っている。

このウォレットは、すべての部位が経年変化を楽しむために存在する。無駄な場所はない。

表革は茶芯の舞台であり、内革は飴色の舞台だ。ロゴマークは裏方、舞台裏に控えていればいい。よって「Original Garment Brothers」の刻印は、通常の使用時には目の届かない場所に、ひっそりと打刻した。

だが、匠は目の届かない場所のロゴにも「美」を追求する。オガワの知らぬ間に厚紙で治具を作成し、ベストな場所に刻印をセットできる環境を整えてくれた。

ウォレット表面に使う「OG-1」の馬革。一般的な切りっ放しのコバではなく、「ヘリ返し」で仕立てるため、折り返す部分を革漉き機で厚みを整える。

オレンジ色に見える部分が茶芯。「OG-1」の馬革は茶芯が目立つよう、明るめの茶褐色に染めている。第二弾のレザーJKT「OG-2」では、こげ茶色の茶芯に変更した。

馬革全面に栃木サドルの内張りを張り合わせる。非常に贅沢な仕様。

馬革の折り返し部分、栃木サドル、双方に接着剤を塗布し、慎重にエッジを折り返していく。

腕の見せ所はコーナー。細いキリを巧みに操り、馬革を畳むように折り込んでいく。

百戦錬磨の亀太郎氏でも初めての工程と言うが、何食わぬ顔でやってのける。そして、この美しさ。脱帽。

折り返した部分をハンマーで叩き、平らにならす。これでウォレット外側のパーツは完了。続きは「後編」にて。