「菱目打ち」から作る。

「OG-8」Leather Walet

オガワはリアルバイカーではない。

ウォレットを見た瞬間、誰もが「革」「形」「色」に目が行く。だが、ウォレットの印象を左右する要素はもうひとつある。「ステッチ幅」、いわゆる「ピッチ」だ。

アメリカンカジュアルにおける手縫いウォレットは無骨なモノが多い。分厚い革を使い、ステッチの間隔を広めに設定した、ワイルドなウォレット。生粋のハーレー乗りたちが好んで愛用するバイカーウォレットが代表格だ。

リアルバイカーは風雨に晒され、転倒という危険が常に付きまとう。当然、身に付けるモノはタフでなければいけない。彼らにとって無骨なウォレットは、ライフスタイルに欠かせない装備でもあるのだ。

だが、オガワはリアルバイカーではない。以前はハーレーに乗っていたが、今は手放してしまった。

年齢も45歳。バックポケットがはち切れんばかりの分厚いウォレットや、いかにも「手縫いです」的なクラフト感満載のウォレットは、今の自分のライフスタイルにはマッチしない。

厚過ぎず、それでいてモノとしての所有欲を満たす「適度なボリューム」。40代、50代、60代のオヤジも愛用できる「スマートな仕立て」がいい。

ステッチ幅にこだわり抜く。

今回のプロジェクトで仕立てるウォレットは、一般的な手縫いウォレットのピッチよりも細かく設定したい。だが、細か過ぎてもダメだ。

手縫いにおいてステッチ幅を決めるのは「菱目打ち」と呼ばれる工具。亀太郎氏もピッチが異なる菱目打ちを、製作物に合わせて使い分けている。そこで、実際に亀太郎氏が製作したレザープロダクツを見ながら、最適なピッチ幅を探ることにした。

理想のピッチに近かったのが上2枚の写真だ。上はやや幅広のピッチ、下は細かいピッチ。数値に換算すると、コンマ数ミリの違い。

さらにイメージを鮮明にするため、亀太郎氏が黒革に施したサンプルステッチを、「OG-3」のステッチと比較する(上写真)。一見すると同じ間隔に見えるが、これも異なるステッチ幅だ。

決まらない。理由はわかっている。オガワの理想とマッチしないのだ。どれも「帯に短し襷に長し」状態。人間の直感は実に繊細、そして正確。コンマ数ミリの誤差も気になってしまう。

「菱目打ちから作りましょう」

亀太郎氏のひと言で、すべてが解決した。一切の妥協を許さない真の職人。数日後、亀太郎氏の工房には、真新しい菱目打ちが2本、届いていた。オガワの理想をカタチにする菱目打ち。

準備は整った。もの凄いウォレットになる。