「O.G.BROS.SHOP」でプロダクトをご購入、ご予約頂いたブラザーたちにお届けしているメールマガジン「O.G.BROS.NEWS」ではすでに解説済みだが、あらためてこのウォレットに使う革、つまり「OG-1」の茶芯馬革を紹介しよう。
ひと口に「茶芯」と言っても、鞣しや染色の違いによって千差万別。気温や湿度によっても仕上がりは異なる。まさに生き物。そこに革のおもしろさがある。オガワはおおまかに「すぐにブラウンが現れる茶芯」「すぐにはブラウンが現れない茶芯」に分類している
優劣付け難い「茶芯の個性」。
茶芯の経年変化をワンシーズンで楽しめるよう、着用後数ヶ月、早い個体では数週間で表面が擦れ、ブラウンが現れるジャケットも多い。この手の茶芯革は、革のエッジ部分を爪先で擦ると、比較的簡単にブラックが剥がれブラウンが顔を覗かす。日に日に変化する革の表情を楽しみたいなら、これしかない。
一方、簡単にはブラウンが現れない茶芯革もある。長期間、着込むことによって、ようやく芯のブラウンが現れる。ブラックが剥がれるというより、じわじわとブラウンが滲み出てくるイメージだ。5年、10年、じっくりと育てたいという玄人向きかもしれない。
「OG-1」の茶芯はどうか。
これは「OG-1」と「ウォレット」の両サンプルを実際に使用テストしているオガワの感想だ。本生産分の馬革は若干特性が異なるかもしれないし、オガワの主観、好みも多分にある。あくまで参考程度に読んで頂きたい。
結論から言ってしまえば、「OG-1」の馬革は、ゆっくりとしたペースでブラウンが現れる茶芯だ。
テストのため、約2か月、屋内外問わず「OG-1」を試着した。クルマの運転時、外食時、自宅でのデスクワーク時も。その結果、袖や前立てに擦れは見られたが、芯のブラウンが現れるに至っていない。ブラックの色味が白っぽく薄れていることは確認できるが、ブラウンは現れていない。
ウォレットの場合はいかに。
お金を支払う時以外はジーンズのバックポケットに収めたまま。喫茶店の木製チェアでも入れっぱなし。ポケットからはみ出たウォレットが椅子や壁に擦れる。あえてハードな状況で使用テストを行った。
ヘリ返しによるエッジは「OG-1」と同じように、ブラックの色味が薄れているのみ。だが、擦れやすいコーナーには僅かだが茶芯が現れ始めている。かなりハードに扱ってこの状態なので、やはり茶芯が現れるスピードはゆっくりだと言える。
まだまだ説得力に欠ける。
「OG-1」も「ウォレット」も、さらに使い込むことで顕著な茶芯を楽しめることは言うまでもないが、言葉だけでは説得力に欠ける。こんな微妙な茶芯を求めているわけではない。次回のレポートでは、この貴重な馬革からどのような茶芯が現れるのか、実験を試みるつもりだ。
偶然ではなく必然の選択。
ゆっくりとブラウンが現れる茶芯馬革。それは偶然ではない。実は「OG-1」に使用する馬革を決める最終段階で、生産ファクトリーのワイツーレザーから、2枚の茶芯馬革の見本が届いた。どちらも秀逸だが、似て非なる馬革。好みで選ぶしかない。
1枚目は、表面に若干光沢があり、爪で何度も擦るとすぐに茶芯が現れた。2枚目は、しっとりとしたマットな馬革。断面から茶芯であることは確認できるが、爪で擦ってもなかなか茶芯は現れない。オガワは迷わず2枚目の馬革を選んだ。
茶芯は美しいが劣化の姿。
栃木サドルが飴色に経年変化しても、革としての品質はそれほど変わるものではない。茶芯はどうか。芯のブラウンが現れるということは、表面のブラックの層が削れているということ。つまり、革が物理的にダメージを受けていることに他ならない。
それがプロダクトとしての耐久性の低下に直結しているとは言わない。しかし、あまりにも短期間で茶芯が現れる革に対しては、長年の使用に対する一抹の不安も残る。さらに、オガワの周りには「茶色くなり過ぎて困った」というレザーラヴァーが意外と多い。茶色を目立たなくさせるため、靴墨を擦り込むほどだ。
十分なタフさを持った素材だからこそ、長年使い込み、経年変化を楽しめる。経年変化を追い求めるあまり、タフさを犠牲にしては本末転倒。以上の理由から、オガワは「ゆっくりと現れる茶芯」が好きなのだ。