譲れないディテール。

Leather Wallet Project

茶芯の馬革を使い「革ジャンのようなウォレット」を実現するため、オガワが決して譲れなかったディテール。それは使い込むほどに擦れ、やがて芯のブラウンが現れる場所。つまり、前回の記事で紹介した革ジャンの前立てや袖、ブーツの履き口のように革が折り返された部分だ。そのディテールをいかに意図的に作り出すか。

頭の中でイメージは完成されていた。一般的なウォレットのように革の裁断面を磨いて仕上げたエッジ(コバ)ではなく、茶芯の馬革を折り返したエッジを作ればいいだけのことだ。革製品において「ヘリ返し」と呼ばれる処理は決して珍しくはない。

言うは易し、行うは難し。

しかし、扱うのは頑固一徹の職人が手塩にかけて作り上げたタフな馬革だ。タンニンをたっぷりと含み、弾力があり、コシも強い。馬革を紙のように薄く漉いてしまえば容易いかもしれないが、アメカジ愛好家、何よりもレザーラヴァーを納得させるウォレットを仕立てなければいけない。それには、ヘリ返し部分にも適度なボリュームが欠かせない。

革の匠を訊ねる。

真っ先に私の脳裏に名前が挙がった職人、それがマニフォールドの宮本代表だった。マニフォールドは、「Daytona BROS」の編集長時代、何度も取材をさせて頂いた名古屋の老舗レザーファクトリーだ。その代表である宮本芳孝氏はブランド設立以前より、長く革業界に身を置いてきた人物。自らを「革屋」と呼び、幅広い革製品の製法に精通したプロ中のプロである。

無駄にゴツいウォレットにはしたくない。それでも、馬革とサドルレザーを使ったウォレットであれば、適度な厚みは不可欠。適度な厚みを確保しつつ、ヘリ返しを美しく仕上げる。宮本代表の技と経験に頼る理由は、まさにそこにあった。

さっそく、30センチ四方にカットしたレザーJKT「OG-1」用の貴重な馬革を持って名古屋へ向かった。事前に電話とメールにてプロジェクトの趣旨を説明していたため、宮本代表の対応は実に的確で効率的だ。

「OG-1」用の馬革を手にすると、手際よく革漉き機を調節し、エッジを漉いて見せた。均一の厚さに漉いた箇所、エッジに向かって徐々に薄くなるように漉いた箇所。それらを折り曲げ、私が求めるボリューム感と質感を問う。

絵、描けますか?

ほんの数分のやり取りの後、宮本代表がこう聞いてきた。その主旨は、イメージするウォレットの絵を書いて、メールして欲しいというもの。それを元にサンプルを作成するという。以上。あまりの打ち合わせの短さに面食らうほどだった。

デカいルアーに驚愕。

少々話が逸れるが、レザーウォレットでその名を知られるマニフォールドは、実は釣り業界でも非常に有名な存在。ポリエチレンのボディに牛ヌメ革を貼り付けたビッグルアーを製造し、全国のトップアングラーから注目されている。

DENIIRO(デニイロ)、 PATIINO(パチイノ)という名を聞いたことはないだろうか。長さ30センチ近く。モデルによっては40センチ超。重さ数百グラム。お値段も4万円越。何から何までビッグなルアーだ。

見た目や話題性だけのルアーではない。全国からその釣果を絶賛する声が続々と届き、釣り雑誌でも取り上げられるほどの名ルアー。ハンドメイドゆえ生産数が少なく超希少。オークションでも高値で取引される幻のルアーだ。

そんな奇想天外なプロダクトを平然と作ってしまう革屋、宮本芳孝氏。「Original Garment Brothers」第一弾となるレザーウォレットを共に作るパートナーとしては、実に贅沢過ぎる匠と言えるのだ。