ミシンへのリスペクト。

Leather Wallet Project

ミシン縫いと手縫い。

アメカジ好きが愛用するレザーウォレットの縫製には、「ミシン縫い」と「手縫い」の二種類がある。ミシン縫いを「マシンソーイング」、手縫いを「ハンドソーイング」と呼ぶこともある。

マニフォールド宮本代表と共にプロジェクトを進めている、「Original Garment Brothers」のウォレットは「ミシン縫い」。数々のウォレットを愛用してきたベテランであれば、どちらの縫製にも魅力があり、比較すること自体がナンセンスであることを知っているはずだ。

一方で「レザーウォレットは手縫いに限る」「手縫いしか持たない」という愛好家がいることも事実だ。

昔は、手縫い至上主義。

何を隠そうこのオガワも、かつては「ウォレット=手縫い」と信じて止まなかった。今でも手縫いのウォレットは大好物。いくつも所有している。職人がひと針ひと針、縫い進めていくハンドメイド感がたまらない。

ミシンに対する価値観の変化。

「Daytona BROS」の編集長時代、何度もマニフォールドを訪れ、取材をさせて頂いた。マニフォールドのファクトリーから生み出されるウォレットは、大半がミシン縫いだ。ブランド設立以前から長く革業界に携わり、革を知り尽くした宮本代表が、なぜミシン縫いにこだわるのか。長年、疑問に思っていた。

「なぜミシン縫いを貫くのか」。ある時、宮本代表に率直な疑問を投げてみた。返ってきたシンプルで的確な返答は、私の長年の疑問を一瞬で解消すると同時に、職人としての揺るぎない信念を感じた。

ミシン縫いの方が難しいから。

理由は「手縫いよりもミシン縫いの方が難しかったから」。宮本代表にとって、ミシンという機械を意のままに自在に使いこなす方が、手縫いよりも圧倒的にハードルが高かった。それゆえに宮本代表はミシン縫いを極める道を選んだのだ。

こう続けた。「ミシンはプロダクト化に対する先人の叡智の結晶の歴史だと思っています」。その言葉には、ミシンという人類が生んだ歴史的生産機械へのリスペクトが込められていた。

マニフォールのウォレットは非常に個性的だ。曲線を多用した「SWORD TIP」、革で立体的意匠を表現した「MORAY」。ミシン縫いを極めた宮本代表だけが生み出せるプロダクトの数々が、氏の言葉に強烈な説得力を与えている。

耐久性と補修。

ミシン縫いと手縫いによる、耐久性、補修の違いについても聞いてみた。耐久性は使用する糸の素材や太さによって変わるので、縫製による差はほとんど無い。糸切れした際の補修は手縫いの方が容易だが、もちろんミシン縫いでも問題なく補修は可能だと語る。

今回のウォレットに使う縫製糸は、もっとも太い0番糸。この太い糸が、ミシン縫いならではの美しいステッチで、貴重な馬革と栃木サドルを縫い合わせていく。強さと美しさの融合こそ、常にオガワがプロダクトに求めていることだ。

そして、マニフォールドが存続する限り、責任を持ってリペアに対応することを、宮本代表は約束してくれた。

誤解を生まないように最後にひと言。オガワは手縫いも大好物。この先、「Original Garment Brothers」として、手縫いによるレザープロダクトを製作する可能性は十分にある。ただ「革ジャンのようなウォレットを作る」という今回のプロジェクトでは、「手縫い」の選択肢が無かっただけである。

セカンドサンプルにオイル塗り、日光浴をさせ、夜はひたすら撫でる。今回は、オガワのウォレットに対する親バカっぷりをレポートしようと思ったが、少々長くなったので、またの機会にさせて頂きたい。