セカンドサンプルを作る。

「OG-4」Denim JKT(End)

仕上がり寸法を追い込む。

浮かれているわけにはいかない。新たな「OG-4」のファーストサンプルを徹底的に検証し、気になる箇所を修正する必要がある。さっそく、パタンナー山地氏の元にファーストサンプルを持ち込み、各部の寸法を細かくチェックする。

従来の「OG-4」を所有しているブラザーにも、新たな「OG-4」を楽しんでもらいたい。そのためには、製品洗いの従来モデルと生地洗いの新モデル、双方の仕上がり寸法を近づけなければいけない。

ところが、デニムという素材は工業製品のようにピタリと同寸に揃えることが難しい。従来モデルでは洗いと乾燥による縮み具合の個体差、新モデルでは縫製による個体差が発生する。

「デニムは生き物」と言われる所以だが、個体差の振れ幅を可能な限り小さくし、従来モデルと同じサイズで楽しんでもらえるように追い込んでいく。

さらに、山地氏とオガワが「OG-4」に袖を通し、数値だけでは気が付かない違和感を探る。その結果、修正すべき2箇所が見えてきた。

まずは袖丈。従来モデルに比べ、新モデルは袖丈が少しだけ長く感じる。実際に測ってみても、パターン上の寸法よりも微妙に長い。難波社長によると縫い伸びによる影響らしい。

デニムJKTの袖丈は、長年着込むことで縮みや着皺によって上がってくる(短くなる)。それを考慮しても、ほんの少し長く感じる。そこで、パターン上で袖丈を1センチ短く修正することにした。

次にポケット位置。新たな「OG-4」では着丈を2センチ伸ばしたが、ポケット位置は従来通り。そのためポケットがやや高く、違和感がある。着丈に合わせてポケット位置も少し下げることにした。

新旧の比較は愚行の極み。

10日後、修正を加えたセカンドサンプルが横浜の自宅に届いた。袖丈もポケット位置も完璧。最高の仕上がりだ。

手にした瞬間、ワクワクするデニムの風合い。袖を通した瞬間、やる気にさせるカッチリ感。今この瞬間のベスト。

この達成感は、まさにパズルが完成した瞬間の爽快感に似ている。

上が新モデル、下が従来モデル。

断っておくが、優劣など存在しない。どちらも最高のプロダクトであり、唯一無二の相棒。それぞれに個性がある。ひと足先に新モデルを手にしたオガワは、既に新旧モデルを楽しんでいる。

あくまでオガワ個人の感覚。汗ばむ日やラフに過ごしたい日には、従来モデルをシャツ感覚で連れ出す。涼しい日やビシッとキメたい日には、新モデルをジャケットとして連れて行く。

従来モデルを愛用中のブラザーが新モデルを手にしてくれたら、このオガワの使い分けを体で感じてくれるだろう。

定番よりも自己満足。

ヴィンテージレプリカ系のアメカジブランドが販売しているデニムJKTの多くは、身返し部分(前立ての裏側)にセルビッジ、つまりデニムのミミを使っている。従来の「OG-4」でも同様のディテールを採用していた。いわば、デニムJKTの定番ディテールだ。

これは、ジャケット完成後に洗いと乾燥を施す、製品洗いのデニムJKTに多く見られる。

新しい「OG-4」のように、生地の状態で洗いと乾燥を施すとセルビッジ部分は激しく波打ち、裁断や縫製が困難になる。そのため、身返しに使えなくなる。

身返しのセルビッジが、定番ディテールであることに異論を唱えるつもりはないが、ヴィンテージに興味がないオガワにとって、セルビッジよりも、捻れや歪みのないカッチリとしたシルエットの方が魅力的だ。悩むことなく身返しのセルビッジは排除することにした。

ならば、セルビッジ仕様ではない生地を使っているのか。デニム業界に精通した人は、そう思うかもしれない。

そうではない。紛れもなくセルビッジデニムを使っている。

確かに、旧式力織機で織り上げる生産効率が悪いセルビッジデニムは特殊な存在であり、セルビッジではないデニムの方が一般的で種類も多く、安価に入手できる。

だが、新たな「OG-4」のデニムは、硬さ、コシ感、しなやかさ、手触り、風合い、色味に惚れ込んで選んだ生地だ。セルビッジで選んだわけではない。使うディテールがなければ、使わなければいい。

それはそれで贅沢。密かな自己満足ということにしておけばいい。

捻れや歪みのないボディ。
セルビッチを使わない身返し。

ヴィンテージ愛好家は不完全燃焼かもしれないが、オガワにとってはこれこそが完全燃焼。いよいよ、次回はオーダー開始となる。