世界が認めた、匠の技。
いよいよ「OG-10」のサードサンプル、最終形が姿を現す。今まで解説してきた修正以外にも、糸色やステッチライン、縫製仕様などを微調整し、アパレルナンバの熟練職人が縫い上げる。
児島滞在2日目は、「OG-10」が縫い上がる工程を追う。すべての工程をじっくりと解説したいところだが、スペースの都合上、ダイジェストにてご紹介させて頂く。
ここに紹介する作業は全工程の数%。実際は、ミリ単位での細かな下処理や都度の糸交換、パーツのアイロン掛けなど、妥協を許さない丁寧な作業の連続だ。
まずは後身頃にバックポケットを縫い付ける。この時すでにポケット内側には補強のヘリンボーンが貼り付けてある。
隠しリベットを避けるステッチは、ファーストサンプルの直線ラインをベースに、職人のさじ加減で微妙なラインを描く。
表側からバックポケットを縫い付ける時には、隠しリベットが見えない。そのため、リベットのギリギリを縫い進むには高度な技術が求められる。
左右の後身頃、ヨークを巻き縫いミシンで縫い合わせる。サンプルの巻縫い箇所は、いつもアパレルナンバの難波会長に縫って頂いている。本当にありがとうございます。
ヨークを含めた、左右の後身頃が縫い合わさった図。
ブラックに染めたヘリンボーン生地のフロントポケットは、深めに設定している。
フロントポケット部を前身頃に縫い合わせる。
「OG-10」はジッパー仕様。ジッパーを装着することで、左右の前身頃が繋がった。
前後身頃を股下で縫い合わせていく。
今度はロックミシンで、股下を縫っていく。ロックミシンは自動的に生地端がカットされ、綺麗にロックが掛かる。
表に返して、再びミシンを掛ける。デニムパンツのインシーム(内股のステッチ)だ。片足の裾から縫い上がり、小股十字を通り、もう片足の裾まで一気に縫い進める。
次はアウトシーム。ウエスト部分から裾に向かって、デニム生地のセルビッチ部分を縫い合わせていく。
縫い合わされたセルビッチ。後ほどアイロンをあてて、綺麗に割る。
ウエストに帯を縫い付ける。「OG-10」では縫製場所によってイエローと薄オレンジの2色の縫製糸を使い分けている。職人は都度、糸替えを行いながらの作業となる。
ベルトループの長さ、縫い付け位置はミリ単位で設定されている。
前後の身頃を縫い合わせたら、アイロンをあててセルビッチを割る。これにより、穿き込むと綺麗なアタリ(色落ち)を楽しめる。
仮止めしたベルトループにカン止めを施す。負担が掛かるパーツなので、しっかりと縫い合わせる。
ダメージを受けやすいジッパーエンドにもカン止めを施す。
フロントポケット口に銅製リベットを打って補強する。
金型からオリジナルで製作した「ORIGINAL GARMENT BROS.」の刻印入りドーナツボタン。
年代物の希少なユニオンスペシャルを使い、チェーンステッチによる裾上げを行う。
縫い上がった「OG-10」を洗い場に持ち込み、ワンウォッシュを施す。防縮加工を施していないデニム生地を使っているので、業務用高温乾燥機によってギュッと縮む。数十本を一度に回せる巨大な乾燥機で「OG-10」1本を乾燥させる。いつも、ありがとうございます。
ワンウォッシュ&乾燥が完了したら、再びアパレルナンバに戻り、山羊革パッチを縫い付ける。
ヴィンテージレプリカ系ジーンズでは、上で紹介している帯縫いと同時に革パッチをグルリと縫い付ける「ひと筆縫い」を採用することが多い。だが、天然皮革の革パッチはワンウォッシュ時の高温乾燥でパリパリに硬化してしまうリスクがある。
ヴィンテージをモチーフにしていない「OG-10」では、「ひと筆縫い」にこだわる必要はない。革パッチがダメージを受けないように、ワンウォッシュ後に縫い付ける「後付け」を採用することにした。
以上で、すべての工程が完了し、「OG-10」は完成となる。次回は「OG-10」のディテールを解説する。