固定観念を覆すプロダクト。
2022年12月中旬、亀太郎氏から「セカンドサンプルが完成した」との連絡が入った。すぐさま東京足立の工房へと向かった。
内部デザインは再構築した。中央に小銭入れ、左右に札入れとカード収納をレイアウト。カード収納同様、札入れ部も革のスペーサーを挟み、箱状の空間を作った。これにより30枚以上の紙幣がストレスなく収まる。
ウォレットの開き具合も、どんぴしゃり。数値にして4〜5センチ。ラウンドジッパーでありながら、ここまで開かないウォレットも珍しい。
サンプルゆえ、細部まで徹底的に仕上げてはいないが、理想のラウンドジッパーロングに限りなく近付いている。大きく開かなくても使いやすいウォレットが存在する事実を、特定少数のブラザーと共有できる日も近い。
左がファーストサンプル、右がセカンドサンプル。
握った瞬間に違和感を感じたウォレットのサイズ。幅を「一針分」小さくすることで、見違えるほど手に馴染むようになった。もしブラザーが両モデルを手に取ったとしたら、確実に「一針分」の違いを体感してもらえるだろう。
それほど「一針」の違いは、小さくも大きい。
この「一針」のために、ウォレットを構成する各パーツの寸法にも修正が必要となったことは言うまでもない。
理想形まで、あと一歩。
内部レイアウトも抜群、手にした瞬間のワクワクも申し分ない。満足感と達成感に浸っていた矢先、新たな違和感が現れた。
馬革の質感を味わうように、ウォレットのボディを撫でている時だった。ボディのとある部分に微妙な盛り上がりを確認。
それが、ジッパー胴体による膨らみであることはすぐにわかった。小銭入れをウォレット内部の外側に配置したファーストサンプルほどではないが、明らかにジッパー胴体が干渉し、ボディを内側から圧迫している。
なるほど。小銭入れを中央に配置したまでは良かったが、ジッパー金具の上端を札入れ&カード収納の縁の高さと揃えたため、ジッパー胴体がそれらに干渉し、ボディを押し出してしまっている。隣り合わせとなるカード収納にも、ジッパー胴体の圧迫痕がしっかりと確認できる。
これでは、ダメだ。
その場で型紙を修正し、小銭入れを数ミリ高く設定。小銭入れ本体の長さも若干短くすることで、ジッパーが圧迫されにくいウォレット中心側へと導いた。
さらに、一層カッチリ感を高めるため、ウォレットを構成する各パーツの革厚にも微調整を加え、最終サンプルの製作を依頼した。
亀太郎氏とオガワのセッション、約二時間で役目を終えたセカンドサンプル。少々可哀想な気もするが、その存在価値は計り知れない。
ウォレットだけでなく、レザーJKTやバッグもそうだ。天然皮革を使わせて頂いていることを当たり前だと思ってはいけない。
今この瞬間の環境に、心より感謝したい。