骨太オヤジ専用パンツ。
強いてカテゴリーに分類するとすれば「ワークパンツ」になるだろう。だが、セオリー通りのワークパンツを作る気など毛頭ない。ハンマーループもサイドポケットもダブルニーも要らない。
タフであることは当たり前。遊び心を持った骨太なオヤジに相応しい1本とは何か。己のライフスタイル、己の価値観と重ね合わせ、熟考の末に辿り着いたディテールで構成した「OG-17」を紹介する。
主要な巻縫い部分は、タフなトリプルステッチを採用する。センターは生成色、両サイドにレッドの縫製糸を使う。新品時は目立たないが、生地の色落ちが進むと次第に浮かび上がってくる。オガワが長年愛用してきたウォバッシュパンツを踏襲した、お気に入りのポイントだ。
股上は、普通〜少し深め程度。お腹に脂肪が乗ったオガワにとって、浅過ぎる股上はどうにも落ち着かない。とは言え、深過ぎる股上もイケてない。ベストな股上に設定した。
黒塗りのオリジナルドーナツボタン。使い込むと塗装が剥げ、下地の真鍮色が顔を覗かせる。ボタン裏のタックもブラック。
フロントはジッパーフライ。ボタンフライよりも圧倒的にラクでいい。経年によってボタンホールが伸び、意図せずフロントがご開帳してしまう不安からも解放される。オガワは現在49歳、妻子持ち。50歳を目前にして、公衆の面前であらぬ疑いをかけられたくもない。己の身を守るためにもジッパーフライが必須となる。
オリジナル刻印入りのリベット。突起が無いので、不用意に手が擦れても痛くない。相棒ラムの本革シートを傷付けることもない。先の製作工程レポートでは、オリジナルリベットが完成していなかったため無刻印リベットを使った。この個体は、リベット完成後に再度仕立てた一本。
ポケットの角度には、並々ならぬこだわりがある。オガワはポケットに手を放り込むことが多い。一般的な「5ポケットジーンズ」のポケット形状は、手を入れづらいので好きではない。
ポケット口を立てて、垂直に近付ければ手を放り込みやすくなるが、問題もある。椅子に腰を下ろした時に、ポケット口がたわんで中のスレーキが見えてしまう。
子供の頃、当時はスレーキという言葉など知らなかったが、ポケット内側の白い布が見えてしまっているオヤジを見て、幼心に「カッコ悪い」と思ったものだ。そんな幼少期の経験から、ポケットの角度には非常にナーバスだ。
そのことについては「OG-10」のレポートで詳しく書いているので、時間がある時に覗いて頂きたい。この「OG-17」のポケット角度も、「OG-10」とほぼ同角度に設定している。
それでも、ポケット内部が見えてしまうこともあるだろう。そんな時のために、スレーキには黒布を使う。汚れが目立たないヘリンボーンがベスト。流通する既製生地がなかったので、白いヘリンボーン生地を独自にブラックに染めて使うことにした。
オガワは現在「iPhone 13 Pro」をメインで使っている。仕事のやり取りの大半はLINE。連絡先や画像はもちろん、スケジュール、取材時の音声データも入っている。SNSの更新も行う。
まさにオージーブロスの心臓部。紛失や破壊でもしようものなら、オガワの日常は完全にストップする。
自重で破壊するリスクがあるバックポケットには絶対に入れない。入れるのはフロントポケットだ。だから、スレーキにはしっかりとした深さが必要になる。
先ほどスレーキが見えてしまっている「カッコ悪いオヤジ」の話をしたが、もうひとつある。パンツのウエスト上端が、ベルトの下に出てしまっているオヤジ。パンツが大き過ぎるのか、ベルトをギシギシと締め上げ過ぎた結果なのか。いずれにせよ、幼少のオガワには「カッコ悪いオヤジ」に見えた。
ベルトがしっかりとウエストをホールドをするように、一般的な「5ポケットジーンズ」に比べ、背中側のベルトループを2本多くしている。
中央が盛り上がった「中高」のベルトループ。ステッチが干渉せず、糸切れしにくい。盛り上がり部分が擦れるため、独特の色落ちも楽しめる。
一般的な革パッチには「品番」「ウエスト」「レングス」が押印される。だが、入手と同時にダイナミックに裾上げを行うオガワにとって、レングス表記ほど無用なものはない。
ブラザーに聞きたい。所有するジーパンやワークパンツの購入時のレングスを、後年、確認したことがあるだろうか。長さが足りない恐れがある、恵まれた足長体型のブラザーであれば再確認することもあるだろう。だが、多くのブラザーは特に意識することはないはずだ。
それよりも、いつから穿き始めたか。年々記憶力の低下を実感するオガワにとっては、レングスよりも穿き始めた年を記しておきたい。
だから「L」ではなく「Y」。
素材は山羊革(ゴート)。デザインはシンプルを極める。写真上が新品、下が数か月穿き込んだサンプル。革という素材に魅せられた男にとって、大袈裟なデザインよりも、シワや光沢が生まれた天然の表情の方が数倍、いや数十倍、ワクワクするのだ。
革パッチについても「OG-10」のレポートで解説している。
ジーパンやワークパンツにおいて、ダメージを受けやすい代表的な箇所がバックポケット。ウォレットの角で生地が薄くなり、やがて穴が空く。そこで、フロントポケットのスレーキと同じ黒染めしたヘリンボーンで、ポケット内側全面を補強している。
ウォバッシュストライプの柄を合わせたバックポケット。ポケット口はリベットで補強している。ヨーク部分は柄合わせを行わず、ランダムに配置。ウエストの帯と同様、横使いするブランドも多いが、オガワの気分は縦使い。
以上が「OG-17」を構成する各ディテールだ。いよいよ次回、オーダー開始となる。