パーツがジャケットになる瞬間。

「OG-1」Leather JKT(End)

ここにも卓越した職人技が存在していた。

切り出されたパーツを巧みなミシンさばきで一着のジャケットに仕立てる縫製の匠。作業場で工程を追わせてもらったが、撮影を忘れて見入ってしまうほど手際が良い。同時にワイツーレザーの丁寧な仕事を目の当たりにした。

裁断されたパーツは一着分がセットになり、縫製場へと届けられる。縫製職人はパーツの状態をチェックし、仕様書と型紙に記された細かな作業指示に目を通す。革を縫うということは、革に穴を開けること。

失敗が許されない一発勝負。

縫製仕様を把握し、革に針を落とす。小気味好い音を立ててミシンが進む。潔いスピード感。匠は平然と縫い進めるが、見ているこちらがハラハラする。職人に対して失礼な話だが……。

パーツとパーツが繋がり、次第にレザージャケットらしくなる。完成品では見ることができない、ライニングを張る前の革の裏側。革が重なり合う部分は適度な厚さに漉きが施される。前立てや裾に貼られた芯材は、長年の使用による型崩れを最小限に防いでくれる。革の折り返しは几帳面にハンマーで叩き、スマートな見た目を心掛ける。

縫製工程においてもっとも緊張するのは襟の取り付けらしい。襟のカーブと身頃のカーブを、左右ズレることなくぴったりと縫い合わせる。ズレてしまってはすべてが台無しとなる。左右の距離感を確認しながら、この時ばかりは慎重にミシンを走らせていた。

ポケットは7ミリ幅の両玉縁を希望した。切り込みのない前身頃にポケットが作られていく工程は実に見応えがある。玉縁を美しく見せるため、ミリ単位での繊細な作業が進められた。

「日本刀のように研ぎ澄まされた一着」を目指したため、このジャケットに使われる金具はフロントジッパーのみ。あとは「Original Garment Brothers」「Y’2 LEATHER」の織りネーム、コットンライニングくらいだ。シンプルゆえにステッチの乱れは致命傷。縫製職人の技が、このジャケットの美しさを左右する。

ジッパーは奇をてらうことなく定番をセレクトした。「YKK」が1940〜50年代のアメリカ製ヴィンテージジッパーを元に復刻した「Old American」。「UNIVERSAL」の刻印が入った真鍮色。大型のジッパーは好みではないので、小ぶりなNo.5サイズ。多くのレザージャケットで採用されているので、機能性、耐久性は実証済みだ。

ジッパーの向き。

ジッパーには「右挿し」と「左挿し」があるのをご存知だろうか。ジッパーには引手と挿し込む蝶棒に分かれる。ジャケットを着た時に

「引手が左/蝶棒が右」=右挿し
「引手が右/蝶棒が左」=左挿し

右利きが多い日本では圧倒的に右挿しが多い。アメリカンな雰囲気を演出したい時は左挿しを使うこともある。今回のジャケットは「JAPAN」を意識しているので定番の右挿しを採用している(上写真)。

大部分のパーツが縫い合わさり、ジャケットが姿を現した。前身頃や袖に集中したシワ。一切の装飾を排したシンプルなデザイン。興奮が収まらない。高ぶる気持ちを抑えながら、オガワ自身も細部仕様の確認、検証を行う。ほぼすべてにおいてパーフェクト。リクエスト通りの仕様になっていたが、裾のステッチ、ライニングの仕様に若干の変更を加えたくなった。

本来であれば撮影当日にサンプルを完成させ、横浜の自宅に持ち帰る予定だったが、100%納得した最高のカタチでこのジャケットを販売したい。結局、縫製は中断。仕様変更を縫製職人に伝え、この日の撮影を終えた。

数日後、横浜の自宅に待望のサンプルが届いた。その全貌、ディテール、そして販売価格は次回の投稿で発表させて頂きたい。