「OG-12」が生まれる現場。

Leather JKT 2020(End)

極上の一着は、古民家で生まれる。

2020年8月、大阪のワイツーレザーに向かった。昨年は毎月のように大阪を訪れていたが、今年は新型コロナウイルスの影響でなかなか足を運べない。気が付けば、今年初の大阪だ。

ワイツーレザーの本社からほど近い場所にある縫製ファクトリー。オガワが企画するレザーJKTを、毎年、仕立ててくれる職人との1年ぶりの再会。

最近移転した新しい作業場は、築数十年の古民家。子供の頃、よく遊びに行った祖母の家を思い出す。最高の空間だ。「Original Garment Brothers」のレザーJKTが生まれる場所としては、申し分ない。

さっそく、新たにラインナップに加えるカーコート 「OG-12」のサンプルを仕立ててもらう。ここで紹介するのはダイジェスト、全工程のごくごく一部。実際には緻密な下準備、ミリ単位での縫製と確認作業が繰り返される。

なお、撮影カットによっては実際の色味と異なる場合もあるが、何卒ご了承頂きたい。

見えない所にこだわる、職人の執念。

前身頃のポケットは、6ミリ幅の両玉縁。細幅ながら見事なステッチワーク。

ポケットのスレーキはダークブラウンの肉厚生地。深さもあり、極寒時には手を放り込める。

ポケットが完成した片身頃。ふとした瞬間、小刻みに波打った馬革の表情がたまらない。

多くのオーダーを頂いているショートウォレット「OG-9」がすっぽりと収まる。クルマの運転時、ウォレットの置き場に困らなくなる。

左右のポケットが完成した前身頃。シンプルなデザインは、革の表情を楽しむ最高の舞台だ。

背中のヨークを縫い合わせる。ヴィンテージモチーフのカーコートではタテ割りも多いが、「OG-12」は骨太な横一直線のヨーク。

前身頃と後ろ身頃を縫い合わせる。写真はショルダー部を縫い合わせているところ。前立ての裏側に補強の芯材(黒いテープ状)が貼られていることが確認できる。

前後身頃の脇の部分を縫い合わせている。

前身頃と後ろ身頃が繋がると、ベストのような状態になる。

続いて襟の製作。表裏の襟パーツを袋状に縫い合わせる。三日月状のパーツは台襟。台襟を設けることで襟の収まりが良くなり、美しい首周りを演出する。

袋状に縫い合わせた襟を表に返し、ハンマーで叩いて馴染ませる。襟はレザーJKTの美しさを左右する重要なディテール。しっかりと整える。

襟の周囲を縫い進める。シャープな襟先(剣先)も「OG-12」の特徴だ。

台襟を表側から見たところ。首の真後ろに位置し、襟が被さることで見えなくなる。

ボディに襟が付いた状態。襟を立体的に縫い付けるには、高度な縫製技術が求められる。

光の加減で、タイコで揉まれた馬革の波打った表情が際立つ。何度見ても、たまらない。

「上袖」「下袖」の2枚の革パーツのみで構成されるシンプルな袖。写真の奥側、袖先のダメージを受けやすい部分には、しっかりと芯材を貼って補強している。

このサンプル個体の袖には、着込むことで荒々しいシワが刻まれるであろう、シボ感に溢れた馬革が使われていた。

袖先をハンマーで軽く叩き、しっかりと折り癖を付ける。

「上袖」「下袖」の2枚の革パーツを縫い合わせて筒状にする。

縫い合わせた部分を、しっかりと割る。美しい仕上がりと快適な着心地のためには、見えない部分の処理が重要となる。

袖裏にライニングを取り付ける。袖には滑りのよいナイロン素材のライニングを使うレザーJKTも多いが、汗でペタペタするので好きではない。ボディと同様、コットンのライニングを採用する。今季リリースする3モデルすべて、袖はコットンライニングだ。

Gジャンタイプの「OG-5」を除き、「OG-2」「OG-12」の袖は、まさに「筒」。レザーJKTを着たままデスクワークをすることが多いオガワにとって、カフスやボタンは邪魔な存在となる。

ボディに袖を縫い付ける。写真はアームホールで縫い合わせているところ。

ダメージを受けやすいアームホールの背中側から脇は、補強テープを貼って強度を高めている。アームホール右側に見える黒い布(肩部)は、着脱時にライニングが必要以上に動かないよう、縫い付けておくためのパーツ。

袖が付いた「OG-12」。この時点では、袖にライニングが付いているが、ボディ本体にはまだ付いていない。

ボディのライニングには、あらかじめ前立てを縫い付けておく。写真で見える黒い部分は、補強のために貼られた芯材。この裏が馬革の前立て。

ライニングが付いた前立てを、ボディ本体に縫い付けていく。

縫い合わせた部分をハンマーで叩いて整える。ジャケット本体とライニングは、共に裏返した状態で縫い合わせ、最後に表に返す。

数センチだけライニングを縫い合わせない開口部を確保しておき、その隙間を使って表に返す。開口部は最後に専門の職人がすくい縫いで閉じる。まるでパズルを組み立てるような仕立て。

ピッタリと重なった左右の襟。巷には左右の襟が揃っていないレザーJKTも意外と多いらしく、美しく揃えるには高い技術が必要となるという。

左身頃には「Y’2 LEATHER」の織りネーム。この「OG-12」が、一流の名門レザーファクトリーで仕立てられた証となる。

ライニングが取り付けられ、表に返された「OG-12」。最後に前立てから裾のエッジを縫い進めれば、縫製工程はすべて完了となる。

ボタンホールを開ける工程、ボタンの取り付けを残すのみとなった「OG-12」。タイコで回して揉み込んだ馬革は、小刻みに波を打った表情が特徴。コシを残しつつ、しなやかな手触りも絶妙。

ボタンの取り付け位置も、徹底的にこだわる。「OG-12」に袖を通した時、もっとも姿がクールで、もっとも使いやすいボタン位置を導き出した。

以上、「OG-12」の縫製工程をダイジェストでご紹介した。一着の「OG-12」が完成するまでの数時間、目の前で繰り返される職人の丁寧な手仕事に、あらためてワイツーレザーの底力を知った。

革業界に携わってきた長い年月が築き上げた国内タンナーとの信頼関係。ワイツーレザーだけが作り出せる極上の馬革を使い、自社ファクトリーで裁断から仕立てまでを行う一貫生産だからこそ、この品質、このプライスで最高のプロダクトをブラザーに届けることができるのだ。

今季も、骨太なブラザーと最高のワクワクを共有する時が訪れた。武者震いが止まらない。

いよいよ、オーダーを開始する。