サムライは、やはりサムライだった。

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東京渋谷、サムライらしい味わいあるイベントスペースで開催された「2019 Spring & Summer Collection」。無機質な空間には、職人魂溢れる個性的なアイテムが並ぶ。20周年というメモリアルイヤーを迎えた2018年。その翌年となる2019年の新作モデルだが、20周年のパワーは継続。実に魅力的な新作が並んだ。

サムライといえばジーンズ。展示会場にも、エグいまでの色落ちを見せる穿き込みサンプルがズラリ。スタッフ一押しの春夏新作ジーンズは「S0712XX」。「とにかく手軽にサムライを穿いてもらいたい」との理由から、サムライジーンズにしては珍しくワンウォッシュでリリース。

洗って糊を落として、乾燥して縮めて、さらにそこから裾上げ……という作業が面倒に思えてしまう気が短いオガワにとっては、試着してすぐ裾上げして持って帰れるモデルは非常に魅力だ。

シルエットも新しい。人気の「S710XX」をベースにしつつ、股下を短く設定し、テーパード感の強いシルエットを採用。それでいて、少し太め体型の人でもストレスなく穿けるように太ももには少し余裕を持たせている。スリムテーパードモデルとして定評がある「S0511XX」より、全体的にゆったりとしていて穿きやすい。身長165センチ、体重82キロのオガワにも優しい1本だ。

生地は15オンス。「サムライ=ヘビーオンス」が定番だが、「男気15oz刀耳セルビッチデニム」と名付けられた生地は、他ブランドの15オンスとは一線を画す。穿きやすいが、荒々しく、そして綺麗な縦落ち。まさに……

痒い所に手が届いてしまった大人のデニム。

サムライが満を持してリリースする新シルエット。全国の侍たちは必ず足を通さなければいけない1本だ。

個人的にはTシャツも気になる。歳も40を超えると、キッチリとしたネック、厚い生地がストレスに感じる日もある。身も心もオフでいたい、そんな日には「RIPEN COTTON T-SHIRT」(リペンコットン吊編Tシャツ)。展示会で頂いたカタログに詳しく説明されていたので要約する。

綿は流通過程で圧縮され、塊となって運搬される。それを、歯で掻くことによって元の状態に解かれ、紡績工程へと進む。一方「RIPEN COTTON T-SHIRT」で使われる綿は、紡績前の段階で綿が好む環境、つまり生育された環境に近い温度、湿度に管理された熟成室で一定期間寝かし、熟成(リペン)させることで自己修復を図った綿となる。

つまり、熟成させた牛肉のような綿。

触ってみると、フカフカでソフト。パジャマにしたいくらい柔らかい。長年着込まれ、いい意味でクタクタになったヴィンテージの手触りだ。アメコミ風、八卦など、新しいモチーフとの相性も抜群だ。

柳生十兵衛(柳生新陰流)の逸話をイメージしたハワイアンシャツは、ド派手で遊び心が満載。光沢があるが綿100%なので手入れもラク。しっかりとした生地感はサムライらしさを存分に楽しませてくれる。

2002年に広島でスタートした「SPINGLE MOVE」とのWネームのスニーカーも登場。今では貴重な技術になりつつあるバルカナイズド製法によるハンドメイド。素材にはサムライジーンズの「17oz武士道セルビッチデニム」。

何がいいって、サイドのジッパー。

見ての通りサイドジッパー仕様。脱ぎ履きの多い日本の風土には最高にマッチしたディテール。これでもう、お開きとなった座敷の飲み会であたふたすることはない。履き心地良し、エイジング良し、使い勝手良しの一足は数量限定生産となる。

最後に紹介するのは雪駄。い草による畳のインソール、牛革のアウトソール&踵。鼻緒には手裏剣ウォバッシュ生地、マキビシ濃淡インディゴウォバッシュ生地を使う。履き込むほどに足に馴染み、エイジングも楽しめる一足。ペシッと隣のヤツの頭を叩くことを躊躇してしまうほどの、堅牢な作りも魅力だ。

予価は税込でも2万円以内。来年の夏、Tシャツ&短パンの超ラフスタイルに合わせるのは、この雪駄かもしれない。

サムライはやっぱりサムライである。

数あるアメカジブランドの中において、ヘビーオンスブームを巻き起こし、そして昨今のアパレル不況の荒波に揉まれながらも、決してブレることなく個性と異色を放ち続けてきた20年。その歴史こそ、サムライの強みであり、サムライの刀だと思っている。この先訪れる30周年も、今と変わらぬ独自の武士道を貫いてくれることを期待せずにはいられない。