今年の冬、骨太な男になる。

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防寒性のある一着が欲しくなった。

職人の手仕事で鞣した馬革のレザーJKT。着心地と色落ちを追求し、デニムの聖地である岡山児島の職人たちと作り上げたデニムJKT。

「Original Garment Brothers」では、私自身、そして共感してくれたブラザーたちのためだけに、極少数生産ながらジャケットを製作してきた。

夏から秋へ。猛暑が過ぎ去り、風の涼しさを感じる頃にはデニムJKT。次第に気温が下がると、デニムJKTでは役不足。晩秋にはレザーJKTが恋しくなる。

凍えるような真冬の厳しい寒さが和らぐと、再び、レザーJKTが心地良い。そして、春の陽気と共に、デニムJKTのベストシーズンが到来する。

さて、冬本番には、何を着る。

アウターを所有していないわけではない。愛用のピーコートだったり、中綿入りのベトジャンだったり、トレンチコートだったり。当たり前だが、アウターはある。ただ、幸せなことに、自分でモノ作りができる環境にいる。そして、嗜好を共有できる愛すべきブラザーたちもいる。ならば、作ろう。

タフな一着であること。

私の脳内には、ある風景が浮かんでいる。アメリカ映画でよく目にする風景。場末のバーや片田舎のガレージ。

主人公でも脇役でも構わない。ただし、歳は40以上のオヤジ世代。年季の入ったブーツに、穿き込まれたブルージーンズ。Tシャツの上に羽織るのは、肉厚のワークジャケットだ。

経年変化で褪色したブラウンのダック生地。着込まれ、洗いざらしのダック生地は、見るからに柔らかい。ライニングは保温性の高いブランケット。無駄な重ね着はせず、シンプルに羽織る。悔しいほどにかっこいい。この雰囲気をカタチにしたい。

「Original Garment Brothers」初となる冬用JKTは、「ダック生地」「ブランケット」を使って仕立てることにする。

オヤジに似合う一着であること。

スタイルはどうするか。ダック生地のワークJKTは、大きく二種類。「カバーオール 」そして「デニムJKTタイプ」に分類される。

まずはカバーオール。あくまで個人的な意見だが、45歳の自分には若干抵抗がある。アメカジの定番ウエアではあるが、「オヤジ+カバーオール 」のスタイルに抵抗がある。

アメリカに行くと、老人がカバーオールを羽織り、ピックアップを運転する光景は珍しくない。サイズには無頓着だが、文句なしに板に付く。究極のデイリーウエア。「DIY」や「ガレージワーク」が文化として根付いているアメリカの大きさを、思い知らされる。

だが、日本において、カバーオールはカジュアル的要素が先行する。食わず嫌いな性格も手伝い、私自身、過去にカバーオールを愛用した記憶がない。そんな個人的な理由で、カバーオールは候補から外す。

デニムJKTタイプはどうか。オリジナルで製作したデニムJKT「OG-4」は、お陰様で大好評だ。「防寒性のある冬用JKTを作ろう」と思った時に、「OG-4」のデザインを使い、表地をダック生地に変更、ブランケットのライニングを追加して仕立てることも考えた。

「OG-4」のデザインは、かなり気に入っている。この先もアップデートを繰り返しながら作り続けるデザインであることは間違いない。

しかし、止めておく。「OG-4」は、着心地と色落ちを追求し、オリジナルでデザインを考案し、柔らかい14.5オンスデニムで仕立てた一着だ。肉厚ダックの表地、ブランケットの裏地というヘビーな仕様において、最高のパフォーマンスを発揮するデザインとは限らない。

何よりも、防寒性を高めた一着を目指す場合、もう少し、着丈は長い方がいい。よって、デニムJKTタイプも候補から外す。

そもそも、カバーオール然り、デニムJKTタイプ然り、定番ワークJKTであれば、作るまでもなく秀逸なアイテムが巷に並ぶ。それを購入すればいいだけだ。

前振りが非常に長くなってしまったが、私の中ではすでにデザインは決まっている。骨太な一着に相応しいデザインは、これしかない。

語り始めると長くなるので、次の機会にしよう。