新たなプロジェクト、始動。
ご好評のうちに予約受付を終了したオリジナルのレザーJKT「OG-1」。国内の小さなタンナーで、頑固一徹の職人が作る茶芯の馬革。弾力があり、しっとりとしたマットな質感。黒ではあるが、どことなく茶芯を想像させる茶色掛かった黒革。一瞬でこの馬革の虜になったオガワ。次なるプロジェクトが動き出した。
「OG-1」の馬革でウォレットを作る。
そもそも大量生産が不可能な馬革だ。2018年10月に「OG-1」の予約受付を締め切り、生産数が確定した後に原皮を仕入れ、職人が鞣し始めるという超アナログな生産スタイル。当然、その時点では、同じ馬革でウォレットを作れることになるとは夢にも思っていなかった。
それは突然訪れた。予約受付終了後、生産の段取りの進捗状況を確認するためにワイツーレザーに電話をしたオガワ。その際に梁本君がさりげなく発したひと言に心が揺さぶられた。
いい原皮が入った。
おそらく本人は何気なく発した言葉。記憶にすら残っていないかもしれない。革のプロとしては、頻繁に、当たり前のように発する言葉かもしれない。だが、オガワにとってその言葉は、妙に職人ぽく、カッコよく、強烈に男心をくすぐられる台詞でもあった。
さらに状況を確認すると、「OG-1」の生産数よりもごく僅かだが多く馬革を仕込むという。これはチャンスとばかりに、余剰生産分から「OG-1」に続く第二弾のレザーJKTのサンプル製作分を確保。さらに、半裁革で数枚の馬革を確保することに成功したのだった。
惚れ込んだ馬革。半裁状態で数枚。限りある貴重な素材を何に仕立てるか。迷いはなかった。ウォレットしかない。マットでしっとりとした弾力のある質感、独特な手触りは、革に詳しい者でなくともタダモノでは無いと感じるはずだ。ましてエイジングを楽しめる茶芯だ。最高にクールなウォレットが生まれることは間違いない。
もはや溢れ出るアイデアを止めることはできない。着込まれてブラウンが現れた革ジャンの袖や前立て、エンジニアブーツの履き口。茶芯が魅せるレザーラヴァー垂涎のディテールをウォレットで再現してみせよう。
茶芯と飴色の融合。
茶芯だけでは物足りない。やはりレザーウォレットの王道、飴色にエイジングする栃木のサドルレザーも恋しい。イメージは固まった。ウォレット外面に茶芯馬革。内部は生成りの栃木サドル。革のエイジングを最大限に楽しむため、デザインはシンプルを極める。革ジャンの袖や前立て、ブーツの履き口のようなディテールをいかにウォレットで再現するか。課題はそこだ。
あの職人しかいない。
私の周りには「Daytona BROS」の編集長時代に知り合った一流のレザークラフトマンたちがいる。彼らは皆、名実ともに日本のトップクラスの職人だ。だが、このウォレットに求める特殊なディテールを高次元で実現させるには、あの職人の技が欠かせない。さっそく電話を1本。さらに詳細を記載したメールを送り、当プロジェクトへの協力を仰いだのだった。